ブルックフィールドが1000億ドルAIインフラ計画を始動 急増する計算需要に世界規模で対応へ

2025年11月19日、カナダのブルックフィールド・アセット・マネジメントが、エヌビディアやクウェート投資庁(KIA)と共同で1000億ドル規模のAIインフラプログラムを開始したと海外メディアが報じた。世界的に高まる計算能力と電力需要の拡大を踏まえたものだ。
エネルギーからデータセンターまで一体投資、AI基盤に1000億ドル投入
ブルックフィールドは、AI向けのインフラ需要が世界的に急増している現状を受け、エネルギー供給からデータセンター、土地、計算資源までを包括する大規模プログラムを始動した。核となるのは同日に立ち上げた「ブルックフィールドAIインフラファンド」で、100億ドルのエクイティ(※)調達を目標とする。
ファンドはすでに50億ドルを確保し、ブルックフィールドに加え、エヌビディアやKIAが出資する体制が整いつつある。これに追加資本と融資を組み合わせ、最大1000億ドル規模のAIインフラ資産を取得する計画だ。背景には、生成AIや大規模モデルの普及に伴う演算量と電力消費の急拡大がある。
ブルックフィールドのAIインフラ責任者シカンダー・ラシッド氏は、「AIは史上最大級のインフラ構築フェーズをもたらす」と述べ、向こう10年で7兆ドルの投資需要が見込まれるとの見方を示した。ファンドの初期投資には、米ブルーム・エナジーとの最大50億ドル規模の枠組み合意が含まれ、データセンターやAI工場向けに最大1ギガワットの自家発電設備を設置する予定である。
※エクイティ:企業やファンドに対する出資金のこと。返済義務を伴わず、運用成果に応じたリターンを得る仕組み。
AIインフラ投資が生む成長機会とリスク 電力確保と地域規制が今後の焦点に
今回の大型プログラムは、AI産業が抱える最大の制約とされる「計算能力と電力の不足」への対応を意図した取り組みとみられる。
メリットとしては、AIモデルの高度化に伴って増大する電力需要に一定の安定性をもたらす可能性があり、データセンター開発のスピードを押し上げる効果も期待される。
特に、エネルギー事業に強みを持つブルックフィールドが基盤整備を主導する点は、長期的な投資メリットにつながるとの見方がある。
一方で、課題も残る。電力料金の変動や供給制約は収益性に影響を与え得るほか、電力インフラ構築には地域ごとの規制や環境要件が関わるため、計画の進行に不確実性が生じやすい。
データセンター建設が進む地域では電力逼迫や環境負荷への懸念も指摘されており、行政による開発制限が強まる可能性もある。
それでも、世界各国がAI開発競争を加速させる中で、インフラ整備は中長期的に重要性が高まるテーマと考えられる。
今後は他の大型ファンドや国富ファンドが同様の投資に動く可能性もあり、AIモデルの高性能化が続く限り、電力・土地・計算資源の確保を巡る競争が激しくなるとの見方も出ている。
今回のプログラムは、その流れを象徴する事例の一つと言えるだろう。
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