トランプ政権、州AI規制の無効化に動く 訴訟と資金凍結で連邦主導へ

2025年11月19日、米ロイターはトランプ米大統領が州ごとのAI規制を阻止する大統領令を検討している草案を確認したと報じた。連邦政府が訴訟や資金凍結を通じて規制権限の主導を握る可能性が浮上している。
訴訟タスクフォース新設と資金凍結で州AI法を制限へ
ロイターが入手した草案によると、この大統領令は州レベルで制定が進むAI関連法を連邦政府が体系的に無効化することを主目的とする。中心となるのは、ボンディ司法長官に対し「AI訴訟タスクフォース」の設置を命じる点であり、同組織は州のAI規制が州間通商を妨げているとして異議を申し立てる役割を担うと記されている。
商務省には、各州のAI関連法を精査し、必要に応じてブロードバンド関連の連邦資金の支給を差し控える方針を示すよう指示する内容も盛り込まれる。州に対する財政面での圧力を通じ、独自規制の撤回を促す意図が読み取れる。
さらに、ホワイトハウスのAI担当責任者デービッド・サックス氏らが、州の動きに先んじて連邦法を検討・勧告する役割を持つとされ、規制権限の主導を連邦政府機関へ集中させる方法の検討が求められている。ホワイトハウス当局者は正式発表前の議論は推測だと述べるが、複数の州が強く反発する可能性は高い。
連邦基準の利点と政治対立のリスク AI規制はどこへ向かうか
今回の構想が実現すれば、企業にとっては法令対応の負担が軽減されるメリットが想定される。州ごとに異なる規制が並立する状況は、AIモデル開発やサービス展開の判断を遅らせる要因になりうる。連邦が統一基準を示すことで、不確実性が減り、投資や研究開発の計画を立てやすくなると考えられる。
一方で、州の独自規制は住民の安全性やプライバシー保護を重視する姿勢から生まれた側面があるため、連邦主導による画一的なルールは地域特性を踏まえた柔軟性を損なう可能性も残る。資金凍結などの圧力が強まれば、政治的対立が激化し、規制の発効タイミングが不透明になるケースもあり得る。
AIの利用領域が急速に広がる中、連邦法が技術の変化に追随できるかという課題も指摘される。硬直した基準が設けられれば、スタートアップや研究機関の開発スピードが鈍り、国際競争力を損なうリスクもある。逆に、適度な監督の下で透明性の高い統一ルールが整えば、企業は安心してサービス展開を進めやすくなり、AI市場の拡大が加速する可能性も考えられる。
米国内での規制主導権をめぐる攻防は長期化が予想されるが、今後は「安全性と革新性のどこに線を引くか」が焦点となり、連邦・州・産業界の三者が新たな均衡点を探る局面に入ると考えられる。
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