ガートナー予測、2030年までにデータセンター電力が倍増へ

2025年11月17日(英国時間)、ガートナーは世界のデータセンター電力需要が2025年に16%増加し、2030年までに倍増するとの予測を発表した。AI最適化サーバーの普及が消費増加の主要因であり、米中が需要の大半を占める見通しである。
AIサーバー導入でデータセンター電力需要が急増
ガートナーによると、世界のデータセンターの電力消費量は2025年の448TWhから2030年には980TWhに達する見込みである。従来型サーバーに加え、AI最適化サーバーの急速な導入が電力需要の拡大を後押ししている。
リサーチディレクターのリンラン・ワン氏は「AI最適化サーバーの電力消費は2025年の93TWhから2030年には432TWhへとほぼ5倍に増加する」と指摘する。2025年には全体の21%を占め、2030年には44%に達する見通しだ。
地域別では、米国と中国が電力需要の3分の2以上を占めるとされる。
中国は効率的なサーバーや計画的インフラにより米国より優位で、米国は地域全体の消費割合が2025年の4%から2030年には7.8%へ増加すると予測される。ヨーロッパも2.7%から5%に伸びる見込みである。
クリーン電力への転換も課題だ。現状は化石燃料が中心だが、グリーン水素、地熱、小型モジュール炉(SMR)などのクリーンエネルギーの導入が進む可能性がある。
バイスプレジデントアナリストのトニー・ハーヴェイ氏は、太陽光や風力発電を補う蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS)の急速な普及を予想している。
日本では、再エネ証書やAI対応設備の導入が一部で進むものの、全体としては遅れが目立つ。ディレクターアナリストの山本琢磨氏は、「ユーザー企業は世界の動向を踏まえながら、新データセンターを検討する必要がある」と指摘している。
AI普及で電力負荷増、クリーン化の遅れも課題
AI最適化サーバーの普及は、高度な計算処理能力の向上により企業のAI活用効率を高めるというメリットをもたらすだろう。また、米国・中国での電力需要集中は、グローバルなインフラ戦略に影響を与える可能性がある。
一方で電力消費増は環境負荷の拡大リスクを伴う。
クリーンエネルギーへの移行が遅れると温室効果ガス排出増や電力供給の不安定化が懸念される。日本でも再エネ導入や効率的な冷却技術の導入が急務であると言える。
将来的には蓄電池システムや地熱マイクログリッドの導入拡大がピーク需要抑制に寄与すると考えられる。加えて、エネルギー効率の高いAIサーバーの開発・運用改善は企業競争力維持に直結する可能性がある。
データセンター設計段階でクリーン電力を組み込むことは、ESG対応や事業運営の持続性向上につながるだろう。AI導入によるビジネス価値の向上と、電力負荷の最適化を両立させる取り組みが今後の課題といえる。
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