KDDIとNEC、合弁会社「UCF」が始動 能動的サイバー防御で国内体制を強化へ

2025年11月20日、KDDIとNECはサイバーセキュリティ強化に向け設立した合弁会社「United Cyber Force(UCF)」の活動開始を発表した。
能動的サイバー防御を見据え、政府機関や企業向けに高度な防衛ソリューションを展開していく。
合弁設立の背景とUCFの役割
KDDIとNECは、サイバー攻撃の高度化と被害拡大を背景に、セキュリティ事業を共同強化するためUnited Cyber Force(UCF)を設立した。
東京都港区に拠点を置き、2025年11月28日から本格的に事業を開始する計画で、代表取締役社長には中谷昇氏が就任する予定になっている。
両社は2025年5月に協業の基本合意を締結しており、今回の合弁設立はその具体的な施策となる。
UCFは、政府が推進する能動的サイバー防御領域(ACD)に焦点を当て、政府機関や民間企業向けにグローバルなセキュリティソリューションを企画・提案する役割を担う。
ACDとは、従来の侵入後対処を中心とした受動的防御ではなく、攻撃の兆候を早期に検知し、未然に脅威を無力化する防御アプローチだ。
KDDIとNECは、「日本の安全・安心な社会の実現に貢献する」とし、国内外のサイバー攻撃に対する対応を展開する方針だ。
加えて、KDDIグループのラック、NECグループのNECセキュリティと連携し、ACDの拡充を目指す。資本金は5,000万円で、KDDIとNECが50%ずつ出資する。
ACDの本格実装が加速へ 企業防御力強化と国際競争力に影響も
UCFの稼働は、日本企業の防御力向上と国全体のセキュリティ体制強化に波及する可能性がある。
特にACDの導入は、従来の防御モデルでは対応困難だった高度攻撃への対処力を高められるだろう。
政府機関との連携が進展すれば、防衛技術の標準化や情報共有の仕組みが整い、産業界にも恩恵が広がりそうだ。
一方で、ACDの運用は法整備や責任範囲の明確化といった課題も伴う。
攻撃兆候を能動的に検知・排除する過程は、企業のリスク管理体制に新たな負荷をもたらすかもしれない。
UCFが提供する統合ソリューションは、こうした課題を吸収しつつ、企業の導入ハードルを下げる役割を果たすと考えられる。
NECは海外での防衛領域に実績を持ち、KDDIは通信インフラ企業として広範な顧客基盤を有する。両社のシナジーを生かしたUCFの事業展開は、日本企業の国際競争力向上にもつながり得る。
今後は、ACD分野の成熟度と法制度の整備状況が、国内セキュリティ市場の進展に大きく影響しそうだ。
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