KADOKAWAが生成AI活用作品にタグ使用推奨 透明性確保へ投稿基準を明確化

KADOKAWAが運営する国内Web小説投稿サイト「カクヨム」は、生成AIを用いて制作された作品に関し、利用状況に応じた「生成AI」関連タグの付与を推奨すると発表した。創作の透明性向上を目的とし、同日開始の「カクヨムコンテスト11」応募作品にも適用される。
生成AIタグ利用を促進 作品内容に応じ3区分を提示
2025年11月19日、カクヨムは生成AIを利用した「カクヨムコンテスト11」「カクヨムコンテスト11【短編】」の応募作品について、内容に応じた3種類のタグを明確化した。
「本文の大半(目安50%以上)がAI生成された文章」の場合は「AI本文利用」、「一部(目安50%未満)がAI生成された文章」の場合は「AI本文一部利用」、補完的活用のみの場合は「AI補助利用」を推奨するとしている。
いずれも作者が軽微な修正を加えた場合も対象に含まれる。
タグの有無によるランキング上の不利益はないと明言した上で、コンテスト参加条件を揃えるための措置と説明している。
今回の区分は50%以上か否かなどの数値判断を目安としつつ、最終的には作者自身の判断に委ねられる形となる。
また、AI補助的利用を「意識的に生成AIを使った場合」に限定し、検索機能や文書自動校正など日常的AI機能は対象外とした。
タグ区分についての個別問い合わせには対応しない方針を示し、運用の公平性を確保する構えだ。
なお、カクヨムは基準が将来変更される可能性を明記している。
創作支援拡大への期待と倫理的課題 利用拡大も基準揺れる可能性
生成AIの利用状況に応じたタグ区分を明確化したことは、読者に対して創作プロセスの透明性を提供する点で有効と言える。
AI活用に肯定的な作者にとっても、投稿時の判断材料が整理され、心理的ハードルが下がる可能性がある。特に「ランキングで不利益がない」と明記された点は、公平性への配慮として評価されるだろう。
一方で、AI生成文と人間の創作の境界は曖昧であり、目安とされた「50%」という数値も主観に依拠する側面が残る。判断を作者に委ねる運用は柔軟性を持つと同時に、曖昧さが投稿者の不安を招く恐れがある。
基準変更の可能性が前提となっている点も、長期的な投稿方針を定めにくくする要因になると考えられる。
AI技術の普及が加速する中で、作品制作におけるAIの関与度はさらに高まると見込まれる。現行の区分は暫定的な措置として機能するものの、執筆プロセスがAIとの共同作業に近づくにつれ、分類基準自体が見直される局面が訪れるだろう。
制度は固定的ではなく、技術進展に伴って運用が変化していくと見るのが現実的だと考えられる。
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