東京都港区が全庁で生成AIを本格導入 業務効率と区民サービス向上へ

東京都港区は2025年5月からエクサウィザーズの「exaBase 生成AI for 自治体」を全庁に導入していると発表した。
文章作成や情報整理などの定型業務をAIが支援し、職員が高度な企画業務に集中できる体制づくりを進める。
導入は港区とエクサウィザーズグループが協働して実施した。
港区が全庁で生成AI導入、独自テンプレやRAGを活用
2025年11月19日、東京都港区は2025年5月から、エクサウィザーズとExa Enterprise AIが提供する「exaBase 生成AI for 自治体」を全庁で運用していることを発表した。
今回の発表では、10種類以上の独自プロンプトテンプレートやRAG(※)を活用した業務改善の取り組みが正式に明らかになった。
港区では、職員の生産性向上と多様化する区民ニーズへの迅速な対応を目的に、生成AIの利用を積極的に拡大している。
議事録の要約、専門資料の要点整理、通知文書のサマリー作成といった情報整理業務が効率化されており、直近のアンケートでは8割超の職員が継続利用を希望しているという。
さらに、キャッチコピー案の生成やイベント企画のアイデア出しなど、創造系業務にも生成AIを活用している。
業務プロセス改善に関するブレインストーミングにも寄与し、庁内での利用範囲が広がっている。
exaBase 生成AI for 自治体は、自治体専用ネットワークであるLGWANに対応しており、通信の安全性を確保しながらGPT-4oやGemini、Claudeといった複数のモデルを使い分けられる点が特徴だ。
禁止ワード管理や機密情報のブロック機能、ログ記録なども備え、庁内規定との整合性を保ちながら利用できる環境を整えている。
※RAG(Retrieval-Augmented Generation):庁内の文書データを参照しながら回答を生成する仕組み。情報精度を高める技術。
行政DXの加速と人材の高度活用が進む一方、運用設計が鍵に
港区の全庁導入は、自治体DXの実装が次のフェーズへ進んだ象徴的な事例と言える。
生成AIが事務作業を肩代わりすることで、企画立案や住民サービスの改善といった付加価値の高い業務に職員がより集中できる可能性がある。
特に、区民対応の迅速化や説明資料の精度向上など、行政サービスの質的向上に寄与しうる点は大きい。
一方で、生成AI導入の効果を最大化するには、運用ルールやプロンプト設計の継続的な改善が欠かせない。
テンプレートの更新や利用状況の可視化、各課・各部署のニーズに応じたカスタマイズが不十分であれば、効果が限定的になるリスクもある。
AIに依存しすぎることで、職員の判断力や文書作成能力が低下することもあるため、利用バランスを保つガバナンスが重要となるだろう。
とはいえ、LGWAN対応の高セキュリティ環境でRAGを活用できる点は、自治体特有の情報管理要件を満たすうえで大きな強みである。
今後は、港区をモデルケースとして他自治体へ導入が広がる可能性もありそうだ。
行政の現場にAIが当たり前に定着するかどうかは、こうした実証的な取り組みがどれだけ成果を示せるかにかかっていると言える。
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