NHKが受信料督促を本格強化へ 未収100万件増で特別対策センター設置

2025年11月18日、日本放送協会(NHK)は受信料の公平負担を徹底するため、本部に「受信料特別対策センター」を新設し、支払督促を伴う民事手続きを強化すると発表した。
新組織が全国局と連携し、未払い世帯への督促体制を大幅に拡充する方針が示された。
未収急増で民事手続き強化 新センターが督促の司令塔に
NHKは受信料の公平負担を目的に、支払督促を中心とした民事手続きを強化する方針を打ち出した。
新設された「受信料特別対策センター」は専門の弁護士や営業担当者で構成され、長期にわたり受信料を支払っていない世帯や事業所への対応を統括する組織となる。
背景には、受信契約を結んでいるにもかかわらず未払いが続く「未収」の急増がある。
NHKによれば、未収件数はこの5年間で約100万件増加し、2019年度の約2.5倍に膨らんだ。
この影響で2024年度末の受信料支払率は78%となり、5年前から3ポイント低下したとされる。
NHKはこれまで、インターネット広告やダイレクトメール、対面での案内、電力・ガスなどインフラ企業との連携など、多様な営業手法で支払いを促してきた。
しかし、未収増加に歯止めがかからない状況が続き、より抜本的な対策が必要と判断した。
センターは全国の放送局と連携しながら督促業務を進める。
特に支払督促の申立てを大幅に増やす計画で、今年度下半期だけで昨年度1年分の10倍超まで拡大させる方針が示された。
来年度にはさらに申立て件数を積み増す予定だという。
公平負担へ制度運用は転換点 丁寧な説明と負担増リスクの両面も
支払督促の強化は、受信料制度の公平性確保に向けた実務の転換点となる。
未収増加が続く中、制度運営の安定には一定の効果が見込まれる。
督促手続きが強化されることで、契約者間の負担の不均衡が是正され、財源確保の安定化につながる可能性がある。
一方で、強制的な手続きの拡大には慎重な視点も必要になる。
支払督促は最終手段として実施されるが、対象件数が増えるほど、生活環境の厳しい世帯に追加的な負担を与える恐れがある。
また、受信料制度そのものに対する議論が続く中で強制措置が先行すると、視聴者の反発や制度への不信感が高まる可能性も否定できない。
さらに、インターネット時代における受信料制度の在り方も改めて議論を呼ぶと考えられる。
放送とネットが融合する現在、受信料の徴収方法やサービスの提供価値をどう示すかは、NHKにとって中長期的な課題になる。
公平負担の理念を実現するためには、強い措置だけでなく、制度への理解を広げる広報やサービス改善が必要になるだろう。
今回のセンター設置が受信料制度の信頼回復につながるかどうかは、運用の丁寧さと透明性に左右されると言える。
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