小泉防衛大臣、AIを指揮統制と無人アセット運用の中核に据える方針を表明

2025年11月11日、小泉防衛大臣は防衛省の記者会見で、AIを指揮統制や無人アセット運用に重点的に活用し、意思決定の迅速化や自衛隊員の負担軽減を進める方針を示した。
国内防衛分野での具体的な運用拡大を明確化した発表である。
防衛省、AIを実戦運用段階へ 指揮統制と無人アセットを重点化
防衛省は、AI技術を研究開発段階から実運用に移行させる方針を明確化した。
小泉防衛大臣は会見で、AIを指揮統制や無人アセット運用の中心に据える意向を示し、「意思決定の迅速化、自衛隊員の負担軽減や省人化・省力化を図り、防衛力の一層の強化を進めていきたい」と述べた。
指揮統制(C2)とは、作戦計画や情報共有、命令発出、遂行監視まで部隊運用の中枢を担う機能であり、現代戦の戦術遂行に不可欠である。
無人アセットには無人偵察機(UAV)や水中無人機(UUV)、自律型ドローンなどが含まれ、AIによる運用効率化が進められる予定である。
防衛AIの運用原則として、日本は「Human-in-the-loop」を重視しており、AIが独立して行動する設計は採用していない。
米国防総省やNATOでも同様の運用原則が採用されており、人間が最終的な統制権を保持することで安全保障上の責任と倫理を維持する仕組みとなっている。
防衛AI導入の利点と課題、人的統制の重要性
AI活用によって迅速な情報処理と判断支援が可能となれば、自衛隊の作戦効率や意思決定の精度向上に大きく寄与すると考えられる。
特に膨大なセンサー情報や衛星データの統合分析は、人間だけでは処理困難な領域で効果を発揮するだろう。また、人的負担の軽減や省人化・省力化にもつながることも利点と言える。
一方で、AIへの過度な依存はリスクを伴う。
最終判断は常に指揮官が統制する必要があるため、誤作動や誤認による判断ミスの可能性は排除できない。安全保障上の倫理と責任を明確化することが不可欠だろう。
また、AI運用の透明性をどう担保するかも重要な論点となり得る。
判断支援の仕組みがブラックボックス化すれば、内部での検証が難しくなり、意思決定の責任構造が不明瞭になる懸念が生じる。
今後は、AIを補助装置として最大限活用しつつ、統制・責任・適応力を一体化した運用体制の整備が求められそうだ。技術の高度化に依存せず、人間と制度が適切に管理・運用できるかどうかが、防衛AIの成否を左右するだろう。
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