コインベースがUSDC基盤の企業向け取引基盤をシンガポールで展開 決済・送金機能を提供開始

2025年11月12日、米暗号資産取引所コインベースは、企業向けの取引プラットフォーム「Coinbase Business」をシンガポールで提供開始したことを発表した。
USDCを軸にした決済・送金機能を備えるサービスで、米国外展開は今回が初となる。
企業がUSDCで売買・送金できる新基盤をシンガポール導入
コインベースは11月12日、企業向けプラットフォーム「Coinbase Business」をシンガポールで正式に稼働させた。
USDC(※)を活用した運用口座や送金ツールを統合したサービスで、同国の法人やスタートアップが暗号資産を売買・交換できるようになる。
企業は口座を通じて国内外へのUSDC送金に対応し、海外従業員への報酬支払いにも利用可能だ。
さらに、企業は同プラットフォームの「決済リンク」を利用し、世界中の顧客から即時決済を受けられる。
数百種類のウォレットからの支払いに対応し、企業側の負担は取引手数料1%にとどまる。
これにより、従来の国際送金に比べて速度とコストの面で大幅な改善が見込めるとされる。
また、コインベースは、インターネットの速度で動く経済環境に対し、既存の銀行送金が手続きやコストの面で依然として課題を抱えていると指摘している。
こうした背景のもと、同サービスは米国でアルファ版として先行提供され、10月16日にはグローバルペイアウトや決済リンクといった決済機能が追加されている。
今回のシンガポール展開は正式な海外初進出となり、英スタンダードチャータード銀行との連携により、個人・法人向けにシンガポールドルのリアルタイム送金も可能になった。
あわせて、コインベースは同日付で企業の登記地をデラウェア州からテキサス州へ変更する計画を規制当局に提出した。
移転の理由として、テキサス州がイノベーション企業の拠点として魅力を高めている点を挙げている。
※USDC:米ドル価値に連動するステーブルコイン。発行体が保有する準備資産によって価格安定性を維持する仕組みを持つ。
USDC決済が浸透する可能性と国際展開の広がり
今回のシンガポール展開は、USDCを基盤とした国際ビジネス決済の普及に向けた重要なステップになるとみられる。
国際送金の高速化や取引コストの最適化は、中小企業やリモートワーカーを抱える企業にとって大きなメリットになりうる。
特に、アジア地域はスタートアップ企業が多く、国際決済の効率化に対する需要が高い領域であるため、導入効果が広がる可能性があると言える。
一方で、暗号資産を基盤とした決済には依然として規制や運用リスクが付随する。
国際送金におけるコンプライアンス対応、USDCの発行体に対する信頼性、各国の規制動向など、越境金融特有の課題が残る点も否めない。
特に、新興国では暗号資産への規制が流動的であり、企業側には慎重なリスク管理が求められる。
ただし、今回のようにスタンダードチャータード銀行と連携し、法定通貨のリアルタイム送金を組み合わせたサービスモデルは、暗号資産と従来金融の中間領域を補完する役割を果たす可能性がある。
今後は、他国への展開やUSDC活用のユースケース拡大が進むかどうかが、企業決済における暗号資産の存在感を左右しそうだ。
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