日本IBMが生成AI研修を革新 カードゲームで基礎理解と実践力を一体的に習得

2025年11月17日、日本IBMは国内向けに生成AIを学べるカードゲーム研修「Generative AI Card Game Training – バトルワーカーズ」の提供を開始した。セガXDが監修し、AIの仕組みやプロンプト作成をゲーム体験で学べる点が特徴だ。
IBMがカードゲーム型生成AI研修を公開 セガXD監修で導入ハードルを低減
日本IBMが発表した新研修は、生成AIへの理解を促すためのカードゲームを中心に構成されている。企業でのAI導入が進む一方、正しい使い方やリスクの理解が追いつかないという課題が背景にある。
IBM Institute for Business Valueによれば、企業の61%がAIエージェントをすでに採用しており、CEOの68%がAIに事業変革を期待している。しかし、現場では「難しそう」「何から始めるべきか分からない」といった心理的障壁が依然として存在する。
こうした課題を踏まえ、IBMはゲーミフィケーションの知見を持つセガXDの監修を受け、カードゲーム形式で学べる研修を開発した。まず、受講者が自分の業務内容を入力すると生成AIが「バトルカード」3枚と「サポートカード」1枚を画面上で生成する。
その後、AIのスコアリング原理やプロンプト改善のコツ、ハルシネーション(※)対策、著作権などを学ぶ仕組みを組み込んだ。最後に、印刷カードを使った個人戦・チーム戦のバトルを行うことで、学習定着と交流促進を狙う構成となっている。初学者から中級者までを対象とし、生成AIの仕組みや活用ポイントを体系的に体験できる内容である。
※ハルシネーション(※):生成AIが事実と異なる情報をもっともらしく生成してしまう現象。誤情報の拡散リスクがあるため、対処法の理解が重要となる。
生成AI浸透を加速する可能性と運用リスク 教育手法の拡張にも期待
今回の研修は、企業におけるAIリテラシー向上の一助となり得る。従来の座学型研修と比較して、ゲーム形式は参加者の主体性を引き出しやすく、プロンプト作成やAIとの役割分担を直感的に理解するきっかけになりやすいとみられる。
こうした体験を通じて従業員がAI活用を自分事として捉え始めれば、日常業務における適用範囲が広がり、生産性向上に寄与する可能性もある。また、チーム戦の導入は部門を横断したコミュニケーションを促す要素となり、AI活用の定着に向けた組織文化づくりの一端を担う可能性も指摘できる。
一方で、ゲーム形式だけでは高度な判断力や専門的なリスク管理まで十分に網羅できるとは限らない。カード生成に業務関連情報を入力する場面もあるため、データ管理やプライバシー保護の取り扱いには一定の留意が必要となる。
企業としては、ゲーム型研修を導入フェーズの教育ツールと位置づけ、実務で求められる知識を補完する追加研修との組み合わせを検討するのが現実的だろう。
それでも、生成AI活用学習の“入口”としては有効性が期待され、日本IBMの取り組みが他社の教育プログラム開発の参考になる可能性はある。
今後は業種別のシナリオ展開や、より高度な応用版の開発など、多様な派生サービスが登場する余地もあり、企業研修市場に一定の波及効果をもたらす展開が想定される。
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