生成AIによる記事無断使用が深刻化 日本新聞協会が制度の見直しを要求
2025年11月14日、日本新聞協会は生成AI事業者による新聞記事の無断使用問題について会見を開き、現行の著作権法では線引きが曖昧だとして見直しを求めた。文化庁でも議論が続いており、国内メディアとAI企業の関係が大きく変わる局面を迎えている。
AIの無断学習が拡大 著作権法の曖昧さが火種に
生成AIは公開情報をもとに文章や画像を生成し、検索や要約の代替として利用が広がっている。だが、その裏側ではメディア各社が提供する有料記事が許諾なく学習に使われるケースが相次ぎ、問題が顕在化している。
実際、日経新聞などは、米国のAI事業者によって有料会員向け記事が無断利用されたとして、購読者減や広告収入への影響を訴えている。
背景には、2018年の改正著作権法がある。同法30条の4は、AIなどの情報解析に限り著作物の学習を原則認めている。
一方で「著作権者の利益を不当に害する場合」は使用が制限されるが、その具体例は示されていない。この曖昧さが、権利者とAI事業者の認識のずれを生んでいると言える。
弁理士で金沢工業大客員教授の栗原潔氏は、これらの規定を「最大の争点」だと指摘する。現時点では、学習行為だけでは複製権侵害には当たらないとされる一方、有料記事を含むデータセットで学習させれば「権利者の利益を害する」と判断される可能性が残る。
文化庁も2024年（令和6年）に、複製防止策を講じている記事をAIが無断学習させた場合には著作権侵害の恐れがあるとの見解を示したが、最終判断は利用者側に委ねられたままだ。
一方、海外ではメディアとAI事業者がライセンス契約を結ぶ動きが加速している。
栗原氏も「新たな制度設計が不可欠だ。日本でもAI事業者とメディアが提携する流れになるのでは。」との見解を示している。
制度再設計とAI事業者・メディアの新たな関係はどう動くか
生成AIによる記事利用は、情報アクセスの迅速化と知識の再活用ができるという点でメリットがある。膨大な記事が学習に利用されることで分析精度が高まり、新たな洞察が生まれることもあるだろう。
一方で、現行制度の曖昧さが放置されれば、著作権者の経済的利益が侵害される恐れがある。特に有料記事が無断で学習される場合、購読者離れや広告収益の減少につながりかねず、メディアの持続性を脅かすリスクがある。
また、AIが生成する要約・分析が既存記事の代替として機能するケースが増えれば、一次情報発信者の価値が低下する懸念もある。
逆に、適切なライセンス契約が導入されれば、新たな収益モデルが形成され、AIとメディアが共存する環境へ転換する可能性も残っている。
日本の制度改正が進むかどうかは、権利者保護とAI産業振興のバランスをどう取るかにかかっていると言える。
制度が適切に整備されれば、新たな協業モデルが台頭し、メディアとAIは対立関係から共生関係へ移行するかもしれない。
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