JR西日本とNTT西日本が光ファイバを鉄道監視に活用 広域設備を常時把握する新モニタリング基盤

2025年11月12日、JR西日本とNTT西日本は、通信用光ファイバを振動センサーとして利用する光ファイバセンシング技術を鉄道分野に応用する共同検証を開始した。
列車位置の把握や線路設備の振動監視に関する基礎研究を進め、鉄道設備の常時モニタリング体制の構築をめざす取り組みだ。
光ファイバで鉄道設備を監視 JR西とNTT西が共同検証を開始
JR西日本とNTT西日本は、通信用光ファイバを振動検知に用いる光ファイバセンシング技術の鉄道分野への応用に向けた実証を本格化した。
両社は2025年11月12日に取り組みを発表し、列車位置の把握や線路周辺の異常を検知するための基礎研究を進めている。
この技術は、光ファイバに照射した光の反射変化を解析し、振動発生地点と内容を特定する仕組みである。
1台の装置で数十kmの線路沿いを連続監視でき、従来より広範囲かつ高精度な状態把握が可能になる。
物理的な接触を必要としないため、保守員が設備に触れずに異常兆候を検出できる点も特徴だ。
背景には、鉄道保守の担い手不足がある。
少子高齢化の影響で保守要員の確保が難しくなるなか、広域設備を少人数で管理できる仕組みが求められてきた。
NTT西日本は光ファイバセンシングの実用化を多分野で進めており、JR西日本が保有する広大な通信・鉄道インフラとの組み合わせが検証の柱となっている。
基礎研究では、取得データから列車の走行位置を高精度に識別できることが確認され、技術有効性の初期成果が示された。
今後は落石や倒木、設備故障などの検知領域を広げ、運行中の安全確保に寄与するシステムの構築を進める。
研究成果は2025年11月26日から開催される「第9回鉄道技術展2025」で紹介される予定だ。
※光ファイバセンシング:光の反射特性を利用し、光ファイバに伝わる振動や歪みを解析することで位置情報や異常を検知する技術。
鉄道保守の省力化と安全性向上 実装拡大で広がる利点と新たな課題
振動センサーに既設の光ファイバを活用することは、新たな設備投資を抑えつつ監視範囲を拡大できるという点で意義が大きい。
線路沿線の異常を常時把握できれば、点検頻度の最適化や保守作業の省力化につながり、人的リソース不足に直面する鉄道事業者にとって有益な選択肢となり得る。
また、列車位置検知の高精度化は運行管理を高度化し、異常検知機能の拡張は自然災害時のリスク低減に寄与する可能性がある。
落石や倒木の早期把握が実現すれば、運休判断や復旧対応の迅速化にもつながるかもしれない。
一方で、広域データを扱うセンシング基盤には解析負荷の増大や誤検知リスクが伴うため、運用設計の精緻化が欠かせないだろう。
センシング精度の安定確保、既存の鉄道システムとの連携方式、現場運用に適したアラート基準の策定など、実装段階で検討すべき論点も多いと考えられる。
それでも、光ファイバを使った広域モニタリングは、鉄道インフラの維持管理を革新しうる技術である。
今後、検知範囲の拡張や解析技術の向上が進めば、安全性と運行効率の両面で新たな価値をもたらし、鉄道事業者のデジタル転換を後押しするかもしれない。
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