ムーンペイが企業向けステーブルコイン発行参入 M0統合で多チェーン展開

2025年11月13日、英米で暗号資産決済を展開するムーンペイが、企業向けステーブルコインの発行事業を開始した。アプリケーション特化型基盤を提供するM0(エムゼロ)との統合を発表し、複数チェーンで運用可能なデジタルドルを提供できる体制を整えたとしている。
企業が独自通貨を発行できるフルスタック基盤を構築
ムーンペイは今回の発表で、カスタムステーブルコイン(※)を企業が大規模に発行・管理できる新インフラを公開した。
これにより企業は、デジタルドルを複数のブロックチェーン上で展開できるようになる。また、M0との統合によって相互運用性が確保される。
同社は世界300万人以上の利用者と500社を超える企業に決済基盤を提供してきた。
ムーンペイは、ステーブルコイン事業の「買付・売却・交換・入金・決済」を自社サービス群で利用できる体制を整えたと説明する。
今年買収したアイアンの機能も連携され、資金の入出金や交換機能を含めたフルスタック型の提供が可能になったという。
主要な提供先は米国、アジア、ラテンアメリカの企業とされる。
組織体制も強化され、元パクソス幹部のザック・カートラー(Zach Kwartler)氏が新たにヘッド・オブ・ステーブルコインに就任した。
資金管理部門には、同じくパクソス出身のデレク・ユー(Derek Yu)氏を迎え、ステーブルコインの流動性管理や財務運営を強化する。
※ステーブルコイン:法定通貨などの価値に連動し価格を安定させた暗号資産。決済や送金で利用されることが多い。
デジタルドル普及は進むか 決済網拡大と規制リスクの分岐点
ムーンペイの新事業は、企業が通貨を自社プロダクトの一部として扱う潮流を後押しする可能性がある。
安定価値のデジタルドルをアプリ内で即時決済に使えば、国境をまたぐ取引が滑らかになり、金融インフラの整備が遅れた地域でも新たな決済手段として浸透するだろう。特に、アジアやラテンアメリカでは、企業が導入するインセンティブは大きいと考えられる。
一方で、ステーブルコイン発行には規制リスクも伴う。米国で準備金の公開性や発行者の監督体制をめぐる議論が続き、企業が独自通貨を展開する場合は、監督ルールの厳格化が影響する可能性もある。
ムーンペイが複数地域でライセンスを取得している点は強みだが、各国当局の方針によって市場拡大の速度は変動するだろう。
それでも、決済・交換・入金まで単一企業が提供できるモデルは、銀行やカードネットワークを巻き込んだ新しい決済網を形成するための基盤となり得る。
ステーブルコイン市場はまだ発展途上であるため、規制整備の進度と企業の実利用が連動しながら、数年単位でバランスを探る局面が続くと見込まれる。
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