国内大手が80億円出資 Third Intelligence、日本発「遍在型AGI」開発を本格加速

2025年11月12日、東京のAI企業Third Intelligenceが国内大手4社を引受先に80億円の資金調達を実施したと発表した。独自AIを基盤とする「遍在型AGI」開発を強化し、研究組織の拡張と採用を進める計画だ。
Third Intelligenceが80億円調達し独自AGI構築を推進
Third Intelligenceは、三菱UFJ銀行を中心に、三井住友銀行、SBIグループ、博報堂DYベンチャーズを出資元とする第三者割当増資を実施した。今回が同社初の本格的な資金調達であり、開発体制を拡張する方針が明示された。
同社は松尾豊氏と石橋準也氏らによって設立され、2025年6月から独自AIの研究開発を本格化させている。
「遍在型AGI」は共通の基盤を持つAIを利用者自身が目的に応じて学習させる設計で、個人が自分専用のAIを持つ構想が特徴となる。
背景には、基盤モデルの開発が一部の海外企業に集中する現状がある。海外依存が続く場合、利用制限や技術アクセスの不確実性が生じ、国内産業にとってリスクが高まる。
Third Intelligenceは、日本企業が自立したAGI技術を保有する重要性を強調している。
調達資金は研究体制の整備に投じられる。現在は松尾研究所出身者を含む約40名で構成され、研究者・エンジニア・プロダクト担当が協働する組織を形成している。
今後は採用を一段と強化し、開発・実装・運用を統合した体制を構築する方針だ。
日本発AGIがもたらす利点と競争環境の変化
独自AIを基点とする開発モデルは、業務効率の向上だけでなく、日常的な意思決定や創作行為を補助する存在として広がりを見せると考えられる。
この個別最適の性質は既存の汎用AIでは得にくいため、導入企業にとって差別化要因になりうる。
国内金融機関や大手企業が参画した点は、産業横断での社会実装に向けた連携にもつながりやすくなるだろう。金融・広告・デジタル領域まで広がる応用が想定され、企業ごとのユースケースが増えれば新たな市場形成が進むとみられる。
一方で、AGI開発には膨大な計算資源と高度人材が求められるため、資金循環を維持できる体制が整うかが課題となりそうだ。
今回の調達を契機に研究投資が拡大すれば、国内でのAI基盤育成が進む可能性があるが、同時に人材獲得競争が激しさを増す懸念も残る。
今後は、日本発AGIがグローバル競争の中でどこまで存在感を示せるかが焦点となるだろう。自社で技術循環を完結できる体制が整えば持続性は高まるが、市場の急速な変化に適応し続けるためには、長期的な研究投資と産業界の協働が不可欠と言える。
株式会社Third Intelligence プレスリリース
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