米アップル、iPhoneでパスポート情報から“身分証”生成 空港での本人確認が一段と簡便に

2025年11月12日、米アップルはApple Walletで新たに「Digital ID」を利用可能にしたと発表した。
米国パスポートの情報を読み取ってiPhone上で身分証を生成できる仕組みで、まずは米国内の250か所以上のTSAチェックポイントで本人確認に用いられる。
パスポートを読み取りiPhoneに“身分証”作成 米国内で順次運用拡大へ
アップルはDigital IDを正式公開し、iPhoneやApple Watch上で新たなデジタル身分証を生成できるようにした。
ユーザーはWalletアプリで「Driver’s License or ID Cards」を選択し、Digital IDをタップするだけで登録手続きが始まる。
ここで物理パスポートの写真ページをスキャンし、背面に埋め込まれたICチップ(※)を読み取ることでデータの正確性を検証する仕組みだ。
本人確認ではセルフィー撮影に加えて、顔や頭の動きも求められる。
認証が完了すると、Digital IDがWalletに追加される流れとなる。
当初の利用範囲は米国内に限られ、TSA(米運輸保安局)が運営する250以上の空港チェックポイントでの本人確認に対応する。
国際線でのパスポート代替には使えず、物理パスポートの携行が引き続き必要とされる。
運用開始に合わせて、アップルの副社長ジェニファー・ベイリー氏は「デジタルIDの導入により、米国パスポートの情報を使ってウォレットに身分証明書を追加できるようになり、この安全で便利な選択肢が全国のさらに多くのユーザーに提供される」とコメントしている。
Digital IDはこれまで提供されてきた「運転免許証・州IDのWallet追加」機能を拡張する位置となる。
登録は任意だが、Apple WalletのID機能を利用する州はすでに12州とプエルトリコに広がり、日本でもマイナンバーカード対応が開始されている。
※ICチップ:パスポート背面に搭載される電子チップ。氏名・生年月日・顔写真などの本人情報を格納し、真正性を確認するために使用される。
デジタル身分証の普及が加速へ 利便性向上とプライバシー保護の両立が鍵
Digital IDの導入は、本人確認手続きの効率化を大幅に進める可能性がある。空港やホテル、年齢確認を求める各種サービスでの待ち時間短縮が期待され、将来的にはオンライン認証やアプリ内本人確認にも用途が広がる見通しだ。
一方で、プライバシー保護の観点から、デジタル身分証の普及には慎重さも必要になりそうだ。デバイス依存のため、バッテリー切れや故障時のリスクも残る。
また、国際的な相互運用性には依然課題があるため、各国の法制度との整合性が今後の焦点となるだろう。
普及の鍵を握るのは、TSA以外の事業者がどこまでDigital IDを受け入れられるかだと考えられる。金融機関、オンラインサービス、酒類販売店など、年齢・本人確認を必要とする場面は多い。
これらの事業者が対応を進めれば、物理カードを携帯しない生活が現実味を帯びそうだ。
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