韓国NH農協銀行が観光客向けVAT還付を刷新 アバランチ活用の即時デジタル還付モデルを検証へ

2025年11月13日、韓国のNH農協銀行が訪韓外国人観光客向けVAT還付をデジタル化する概念実証(PoC)を開始したと複数メディアが報じた。アバランチのブロックチェーン基盤とステーブルコインを組み合わせ、還付処理をリアルタイム化する取り組みで、韓国の観光経済に新たな変革をもたらす可能性がある。
ステーブルコインでVAT還付を即時化する新モデルが始動
NH農協銀行(NongHyup Bank)が進めるPoC(※1)は、アバランチ、ファイアブロックス、マスターカード、ワールドペイと連携し、付加価値税(VAT)還付の自動化とステーブルコインによる即時送金をテストする内容である。
実資金や顧客データは扱わず、技術的な成立性に焦点を当てるとのことだ。
韓国では訪韓客が2024年に約1,637万人(前年比+ 48.4%)まで増加し、紙ベースで進む還付手続きの遅延が課題として顕在化してきた。
PoCではアバランチの高速処理とスマートコントラクト(※2)を活用し、購入情報の自動記録から還付確定までを一体で処理する流れを構築する。
さらに、ステーブルコインを活用することで、送金処理と為替交換を同時に完結させ、実際の還付受取までのタイムラグをほぼゼロに近づける狙いがある。
NH農協銀行のチェ・ウンジェ常務は「ステーブルコインベースの還付モデルは、ブロックチェーンが顧客体験を具体的に改善し、国家競争力を強化する方法を示している。韓国の観光経済のデジタル変革をリードし、国際的な決済効率を高めていく」と述べている。
また、李在明(イ・ジェミョン)大統領は、2025年後半をめどにウォン建てステーブルコインの禁止解除を政策に入れている。
主要銀行トップがテザー(Tether)社や米サークル(Circle)社と接触した事例も報じられている。
※1 PoC(Proof of Concept):新しい技術や仕組みが現実の業務で機能するかを確認するための検証プロセス。実運用前に、技術的な実現可能性や課題を明確にする目的で実施される。
※2 スマートコントラクト:ブロックチェーン上で自動実行される契約プログラム。手続きの透明性や自動化に優れる。
韓国で進むステーブルコイン政策 還付モデルがもたらす波及効果
NH農協銀行が進めるVAT還付のデジタル化PoCには、高い効果が見込まれる。
VAT還付の即時化が実現すれば、観光客の利便性向上だけでなく、韓国のフィンテック産業が国際競争力を獲得する契機になる可能性が高い。還付処理における透明性の担保、為替リスクの低減、越境決済における手数料圧縮といった効果も期待される。
一方で、課題も少なくない。
ステーブルコインを還付処理に使う以上、規制の整備や監督の透明化は避けて通れないだろう。特に顧客保護やAML/CFTの枠組みが曖昧なままでは、実装フェーズで停滞する恐れがある。
また、このモデルが商業決済や行政サービスに広がる場合、既存インフラとの連携が重要になるが、互換性の確保には相応の調整コストが発生すると見られる。
それでも、韓国がアジアで最も積極的にステーブルコイン政策を進めている国の一つであることは確かであり、今回のPoCはその実装段階への大きな一歩と言える。
今回のPoCが商用化されれば、観光客にとって“待たない還付”が当たり前になる未来が開けるかもしれない。
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