Visa、国際報酬の即時化へ ステーブルコイン直接支払いの実証を開始

米決済大手Visaは2025年11月12日、ポルトガル・リスボンで開催されたWeb Summitにて、ステーブルコインを使った国際報酬の即時支払いを検証するパイロットを開始したと発表した。企業から受取人のウォレットに直接送金する新方式の検証が進められている。
Visaが報酬を即時送金する新PoCを始動
Visaは企業の拠出した資金を受取人側でステーブルコイン(※)へ変換し、カードや銀行口座を介さずに報酬へアクセスできる仕組みを検証している。
従来モデルでは、企業からの送金が中継銀行を経由して着金するまで時間差が生じていたが、この新方式はブロックチェーンを介するため遅延を抑えやすい構造となる。
受取人はUSDCなど米ドル連動型のステーブルコインで報酬を受け取り、保持や使用、法定通貨への換金など、柔軟な選択肢を持つ。取引がブロックチェーン上に記録されるため、透明性や監査性が高まる点も今回のPoCの特徴とされる。
Visaは9月に、国際送金の効率化を目的としたステーブルコインによる前払い機能をVisa Directで試験導入しており、今回の取り組みはその発展的段階にあたる。
前回は企業側の資金管理を中心としていたが、今回は消費者など最終受取人への直接支払いを焦点に据えている。
同社は選定パートナーと共に現場テストを進めており、2026年後半の本格展開を視野に入れる。さらに、各国の規制整備に応じて対象地域と業種を広げる計画だ。
将来的には、複数のステーブルコインと複数チェーンを組み合わせた支払いネットワークの拡充を見込んでいる。
※ステーブルコイン:価値を法定通貨などに連動させ、価格変動を抑えることを目的として設計された暗号資産。
国際報酬の高度化とリスク管理が同時に問われる展開へ
ステーブルコインを活用した直接送金は、国境を越える労働やクリエイター経済の拡大に伴い需要が高まる可能性がある。
銀行口座を持たない人々にも報酬アクセスの選択肢を提供できる点は金融包摂の観点で評価され、地域を問わず働くフリーランスにメリットが及ぶと考えられる。
即時アクセスが実現すれば、クリエイターや小規模事業者の資金繰りは改善し、商取引の回転率が高まる余地もある。
こうした機能が普及すれば、企業が国際的な人材と協働しやすくなることも期待される。報酬支払いの柔軟さは、採用や契約形態の多様化にも寄与すると見込まれる。
一方で、普及には規制面の課題が残る。ステーブルコインは発行体の管理体制や担保構造が市場ごとに異なり、各国の金融当局が求める基準を満たす必要があると考えられる。
安定性への懸念が生じれば利用拡大のスピードに影響する可能性があるため、透明性確保とリスク評価の精度が重要となるだろう。
また、受取人がステーブルコインを保持する場合、価格の安定性や換金のしやすさも実務的な判断材料になり得る。
普及が進むほど、多様なチェーンの互換性や手数料構造がユーザー行動に影響を与えるため、利便性と安全性の両立が企業側に問われる展開となりそうだ。
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