スタンダードチャータードがDeCard支援 ステーブルコイン決済の実用化が加速へ

2025年11月11日、英スタンダードチャータード銀行が、シンガポールのDCS Card Centreと提携し、ステーブルコイン対応クレジットカード「DeCard」の運用支援を開始すると発表した。
大手銀行主導のカード型デジタル資産決済として注目されている。
大手銀がDeCard支援、ステーブルコイン決済を本格化
スタンダードチャータード銀行は、DCS Card Centreが発行する次世代クレジットカード「DeCard」のメインバンキングパートナーとなり、決済処理や口座管理、入金照合といった基盤業務を担う。
発表は11月11日に両社が共同で行ったもので、シンガポール市場を起点に提供が始まる。
具体的には、同行のAPI連携によってDeCard利用者の入金情報をリアルタイムで識別し、ステーブルコインおよび法定通貨の決済フローを統合的に処理する仕組みを整備する。
加えて、スタンダードチャータード銀行の金融市場部門が提供する流動性管理や外国為替ヘッジ機能により、決済の安定性を確保する構えだ。
DeCardは、日常支払いにステーブルコインをそのまま利用できる点を特徴とし、DCSのカード発行基盤を通じて展開される。
今回の提携により“即時照合・即時処理”が可能になり、ユーザー体験の向上が期待されている。
対応ステーブルコインの種類は現時点で未公表となる。
規制対応型モデルが普及後押し 透明性と手数料に優位も課題
今回の取り組みは、ステーブルコイン決済の商用化を後押しする大きな一歩となるだろう。
大手銀行がバックエンドを担うことで、透明性やAML対応など、これまで暗号資産サービスが課題としてきた信頼性の確保が進むと見られる。
特に、入金照合作業をAPIで自動化したことは、企業側の運用負荷を大幅に下げる要素になり得る。
一方で、市場拡大にはいくつかのリスクも存在する。
まず、ステーブルコインの裏付け資産や規制の枠組みは国によって差があり、海外展開時の遵法性確保は容易ではないと考えられる。
また、為替変動リスクを抑えるためのヘッジコストが手数料に転嫁される可能性もあるため、既存のカード決済と比較した経済合理性が問われる局面も出てくるだろう。
それでも、商用利用を前提とした“TradFi×DeFi”の統合モデルは、デジタル資産領域の普及を加速させると考えられる。カードという既存インフラを活用することで、ユーザーは暗号資産の保有や移動を意識せずに決済できるため、導入障壁は大幅に低下する。
今回の枠組みが他国の金融機関に波及すれば、ステーブルコイン利用の常態化が進み、アジアを中心とした金融圏の競争力にも影響を与える可能性がある。
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