政府がAI適正利用の指針骨子案を公表 事業者に情報公開を要請、国民にリテラシー向上促す

2025年11月12日、日本政府が人工知能(AI)の適正利用に向けた指針の骨子案をまとめたことが報じられた。生成AIによる偽情報や偏見の助長といったリスクを抑制するため、AI事業者に学習データの情報公開を求め、国民にもAIリテラシーの向上を呼びかける内容となっている。
AI事業者に透明性を求める指針骨子案、リスク抑制が焦点
政府が検討を進めるAI適正利用の指針骨子案では、「ディープフェイク」など虚偽の生成物による混乱を防ぐことが中核に据えられている。
生成AIが生み出す画像や文章の信頼性を確保するため、事業者に対し、AIの学習データや収集方針の公開を求める姿勢を示した。これにより、公平性やプライバシー侵害への懸念を軽減する狙いがある。
指針は9月に全面施行されたAI法に基づき、AIを利用する国民・事業者双方に向けた留意点を整理したものだ。法的拘束力はない。
政府は、推進策を並べた基本計画と併せて議論を進めている。
加えて、骨子案では、AIが誤情報を生成する「ハルシネーション(幻覚)」問題への対応も重視している。その上で、最新の技術と知見を用いた防止策の導入を促す。
AI時代の信頼構築へ課題も 透明性と競争力の両立が鍵
政府が示したAI適正利用の指針骨子案には、透明性向上を軸にした明確な利点が存在する。
学習データの公開方針を示した点は、生成AIが抱える偏見形成や誤情報拡散への抑制につながり、社会全体の信頼基盤を整える契機となるはずだ。ディープフェイクや虚偽生成物への懸念が高まる中で、事業者に一定の説明責任を求める取り組みは、リスク管理の観点から合理的と評価できる。
一方で、データ公開は企業にとって競争力の低下につながりかねず、慎重な調整が求められる。特に、AI開発を国際競争の文脈でとらえる企業は、詳細な開示が研究戦略の流出を招く可能性を無視できない。
また、国民側のAIリテラシー向上を求める方針は意義があるが、教育体制が追いつかない場合、理解格差が社会的ギャップを広げることにもなり得る。偽情報対策の高度化が不可避となる現在、利用者が「AI生成物のリスクを識別できるか」が社会の安定性を左右することになるだろう。
今後は、事業者による自主的な情報公開の枠組みや、AIリテラシー教育の制度化が進むかが焦点となる。
AIを社会の信頼インフラとして定着させるには、透明性の確保と技術革新を両立させる持続的な仕組みづくりが求められると言える。
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