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    AI需要が引き起こす電力逼迫 エネルギー貯蔵に世界的な投資加速の波

    2025年11月12日、UBSセキュリティーズは、米国のAIデータセンター拡大を背景に電力需要が急増し、世界のエネルギー貯蔵市場が今後5年で「ブームサイクル」に突入する可能性が高いとの見方を示した。ロイターが報じている。

    目次

    AIデータセンター需要が電力を押し上げ、蓄電市場は40%成長へ

    UBSセキュリティーズのアナリストは12日の会見で、米国を中心にAIデータセンター建設が急増し、電力需要が急増していると説明した。
    風力や太陽光などの再生エネルギーの出力変動を補助するため、エネルギー貯蔵(※)の需要が高まるという。

    2026年の世界のエネルギー貯蔵需要が前年比40%増になると見込まれている。
    米国では再生可能エネルギーが今後5年間で大幅に伸びる唯一の発電分野になると予測され、エネルギー貯蔵システムの導入拡大が電力の安定供給を左右する要件になるとした。

    一方、中国メーカーは米国市場で20%のシェアを持ち、高収益領域として存在感を示すが、トランプ政権による「1つの大きく美しい法」に盛り込まれた参入制限が最大のリスクになるという。

    さらに、中東、中南米、アフリカ、東南アジアといった新興市場ではエネルギー貯蔵の需要が30〜50%超で伸びる可能性があるとした。

    ※エネルギー貯蔵:電力を蓄電池などにため、需要に応じて放出する技術。再生可能エネルギーの変動を補う目的で使用される。

    加速する蓄電投資の先にある優位性と制約 世界の電力地図はどう変わるか

    エネルギー貯蔵市場の成長は、電力の安定供給に加え、AIインフラの持続的運用を支える基盤となる点で大きなメリットがある。
    電力変動を吸収できれば企業の運用コストを抑えられ、再生可能エネルギーの比率が高い地域では自給力向上につながるとみられる。これにより、企業や自治体が電源戦略の中核に蓄電設備を組み込む動きが強まると考えられる。

    しかし供給チェーンは脆弱であり、特に中国製バッテリーへの依存度が高い現状では、米国の規制強化が価格や供給リスクを高める懸念がある。
    また、素材価格の変動や技術競争の激化も企業の投資判断に影響を及ぼす要因となりうる。データセンターの電力消費が増え続ければ、蓄電増設だけでは需要を吸収しきれない可能性も残る。

    将来に向けては、高密度蓄電池や次世代材料の開発競争が加速し、各国の電力政策や産業戦略に直接影響する局面が訪れるだろう。エネルギー貯蔵は電力インフラの補助的存在から、AI時代の成長産業を支える“戦略資産”へと位置づけが変わるとみられる。

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