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    静岡・西伊豆町で「減災伝承AI」体験会 災害記録をデジタル化し継承へ

    2025年11月7日、静岡県西伊豆町で、AIを活用した災害記録の継承システム「減災伝承AI」の体験会が開かれた。静岡大学と中央大学が共同で開発したもので、地域に残る約100件の災害記録をデジタル化し、住民の防災意識向上と次世代への伝承を目指す。

    目次

    災害の記録をAIが再構築 「減災伝承AI」体験会が西伊豆町で開催

    「減災伝承AI」は、静岡大学と中央大学が共同で研究を進めているもので、西伊豆町の災害記録など約100件のデータがまとめられているという。
    研究員は「この周辺の伝承の記録、後は避難所の情報が出てくる」としている。
    それをもとに、最寄りの避難所までの経路を検索したり、AIが加工した画像とともに訓練シナリオを作成できる。

    中央大学国際情報学部の松崎和賢教授は「図書館で眠ってしまっていたり、人の頭の中だけに残っていたりするもの(災害の記録)をデジタル化して、AIにうまく使わせて、後世に残していきたいという活動になります」と語った。

    参加した町民からは「災害があった当時の写真なんかがあると、もう少しインパクトが強くなるのかなと思う」との意見も寄せられた。
    今後はこうした住民の声を反映しながら、実用化に向けた検証を進める予定である。

    AIが担う「防災の記憶」 地域共創型の減災モデルに期待と課題

    このサービスの最大の利点は、これまで紙資料や個人の記憶に埋もれていた情報を体系的に整理し、いつでもアクセス可能にする点にある。災害体験の継承は時間とともに薄れがちだが、AIの活用により「記録の風化」を防ぐことができると考えられる。
    また、画像生成や避難経路検索といった機能は、住民がより実感をもって防災訓練に参加できる環境を整える効果があるといえるだろう。

    一方で、課題も明確だ。
    まず、AIが扱うデータの正確性と倫理的管理が問題になりうる。過去の記録には証言の曖昧さや感情的要素が含まれることが多く、AIがそれをどのように解釈・提示するかが信頼性を左右するとみられる。
    さらに、災害写真や個人の体験談を用いる場合、プライバシー保護や地域感情への配慮も欠かせない。
    技術的には優れていても、「誰のための記録か」という社会的合意形成が不十分であれば、地域住民との信頼関係を損なう可能性もある。

    それでも、地域住民が主体的にAIに情報を提供し、共同で防災力を高めていく「共創型の減災モデル」は、全国の自治体にも波及する可能性がある。
    西伊豆町の試みは、AIが人の記憶を支える“新しい伝承のかたち”として、地域防災の未来を示すものとなりそうだ。

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