アデコCEO、AIが雇用に与える影響に言及 AI起因の人員削減は「限定的」

2025年11月6日、人材派遣大手アデコのドニ・マシュエル最高経営責任者(CEO)は、人工知能(AI)が雇用に与える影響について今のところ限定的だと述べた。ロイターが報じている。
AI起因の人員削減は一部にとどまる 雇用市場に「革命的な変化」は未到来
マシュエル氏はAIによる雇用喪失への懸念が高まる中、今のところ影響は限定的との見解を示した。アデコは金融から物流まで多様な業種に人材を派遣しており、現場の動向を広く把握している立場にある。
同氏は、顧客企業の一部ではAIの導入に伴う人員削減が見られるものの、いわゆる『大規模な波』ではないと明言した。
最近では米アマゾン・ドット・コムが1万4000人規模の人員削減を発表し、AI活用とリストラの関連性が注目されている。
しかしマシュエル氏は「影響は一部見られるが、人員削減の理由を見ると、一部はむしろ生産性の向上など他の要因であって、必ずしもAIに関係があると限らない」と分析している。
また、「まだ革命的な動きは見られていない。雇用市場に対する影響は初期段階だと言えるだろう」と述べ、現状は過渡期にあるとの認識を示した。
AI導入の本格化はこれから 業種・地域で影響に差も
マシュエル氏の見解は、AIが将来的に雇用市場に大きな変化をもたらす可能性を前提としながらも、現段階では地域や業種ごとのばらつきが大きく、全体的なインパクトはまだ限定的であることを示唆している。
今後数年で、AIの影響はより明確な形で雇用市場に現れる可能性が高い。生成AIや自律エージェントの実用化により、ホワイトカラー職の一部も効率化の対象になりつつある。
すでに金融、物流、カスタマーサポートなどの分野では、AIによる業務最適化が進行中であり、今後は「人がAIを補助する」から「AIが人を補助する」構造へと転換していくとみられる。
ただし完全な代替ではなく、AIを活用するスキルを持つ人材の需要も増すことになりそうだ。教育・研修・職業訓練の仕組みが整備されれば、新たな雇用創出の契機にもなり得る。
AIがもたらす影響は単なる雇用の減少ではなく、仕事の質と構造を変える「静かな再編」となるだろう。企業と労働者がこの変化をどう受け止め、準備するかが、次の10年を左右する鍵になると考えられる。
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