小野田AI戦略担当大臣、採用支援AIの性差偏りに言及 「AIリスクと認識」

2025年11月7日、小野田紀美経済安保・AI戦略担当大臣は閣議後の記者会見で、採用支援AIにおける性差認識精度の偏りについて見解を述べた。現時点で重大な問題は確認されていないが、今後のAI活用拡大を見据え、引き続き調査と対策を進める方針を示した。
採用支援AIの性差偏り、政府が「AIリスク」と明言 調査継続へ
会見で小野田大臣は、採用支援AIの性差認識精度に関する質問に対し、「AIリスクの一つとして認識している」と発言した。政府はすでに企業の採用・人事評価システムを対象とした先行調査を実施しており、その結果を第1回AI戦略本部で報告済みだという。
これまでの調査では大きな問題は確認されていないが、「AI活用の拡大が予想されるため、事態把握を続け、必要な対策を関係省庁と連携して検討していく」と述べた。
さらに、「性差を巡る研究は多岐にわたるが、AIの事例のように科学技術の進展に伴い新たな課題にも目を配りながら継続的に支援していきたい」とし、研究者による継続的な調査・分析を支援する意向を示した。
公平性と効率化のはざまで AI採用の課題と展望
採用支援AIの導入は、選考スピードの向上や人的ミスの削減など、企業の採用業務を効率化する手段として広がりを見せている。
一方で、AIが過去の採用データを学習する過程で形成される無意識のバイアス(※)が、特定の性別や属性に影響を及ぼす可能性が指摘されている。
AIは学習データに依存するシステムであり、その結果は必ずしも公平な判断を再現するものではない。したがって、モデル設計やデータ選定の段階での慎重な検証が求められる。
今後の課題は、AIの意思決定過程を可視化し、企業がその評価基準を説明できる仕組みを整備することにあると考えられる。
透明性と説明可能性の確保は、利用者や応募者の信頼を得るための基盤となる。
「AI導入を一律に否定するのではなく、説明責任を強化することで社会的信頼を築く方向が現実的だ」との見方もある。
さらに、性差研究の深化や多様なデータの収集を通じて、AIが幅広い価値観を反映できる環境を整えることも課題だ。
政府による継続的な調査や対策の実効性が問われる中で、形式的な対応にとどまれば倫理的な不信感を招くおそれがある。
逆に、リスク管理と技術支援を両立させることができれば、日本が「公正なAIガバナンス」を実現する国として評価を高める余地もあるだろう。
※バイアス:AIが学習データや設計の偏りを通じて特定の属性(性別・年齢・人種など)を不公平に扱う傾向のこと。
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