EMEA地域の新規データセンター電力容量が11%減 電力供給制約で建設停滞

2025年11月7日、英不動産サービス大手サヴィルズは、欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域で2025年に稼働した新規データセンターの電力容量が前年同期比11%減の850メガワット(MW)だったと発表した。電力供給の制約が建設計画の遅れを招いているという。
電力不足が深刻化、需要旺盛でも供給追いつかず
サヴィルズの調査によると、EMEA地域で稼働した新規データセンターの電力容量は850MWにとどまり、前年同期の水準を11%下回った。世界的に生成AIの導入が進み、企業や政府によるデータ処理需要が急増しているにもかかわらず、電力網の逼迫が新規建設の妨げとなっている。
データセンターの電力容量とは、サーバーや冷却設備などに供給できる総電力量を示す指標である。サヴィルズによれば、稼働中のデータセンターの総契約電力容量は前年より12%増の1万1400MWに達しており、需要自体は堅調に拡大している。減少が見られたのは、主に電力供給網の制約など外部要因によるものだ。
実際、今年の新規供給能力(テークアップ)は845MWと前年同期の約半分にとどまった。一方、稼働中および契約済みを含む総電力容量は12%増の1万4500MWとなった。
持続的成長の鍵は「電力」と「立地」 AI時代の新たな課題
今回の調査結果は、生成AIやクラウド拡張が進む中で、データセンター産業の成長が電力供給能力と密接に関係している現状を示している。電力不足による建設遅延は一時的な現象にとどまらず、今後の産業基盤整備のボトルネックとなる可能性がある。
一方で、エネルギー効率化技術や再生可能エネルギーの導入拡大に向けた動きが加速することで、環境負荷を抑えた持続的な運用モデルの構築を促す効果も期待される。企業にとっては、電力コスト削減と脱炭素対応を両立させる技術投資が競争力の鍵になるだろう。
懸念点としては、電力網の逼迫が長期化すれば新規施設の稼働時期が遅れ、AIモデルの開発やクラウド処理能力の拡大ペースに影響を与えるリスクがある。
また、電力需要が都市部に集中する一方で、再エネ供給拠点が地方や特定地域に偏る傾向があり、立地選定における柔軟性を損なう可能性も指摘されている。
今後は、電力供給が安定し再エネ比率の高い北欧や中東などへの投資が拡大するとみられる。
電力制約をどのように克服し、需要増大に応じたデータインフラを拡張できるか——それがEMEA地域だけでなく、世界のAI競争力を左右する重要な分岐点となりそうだ。
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