リップル、ウォレット企業パリセイド買収 企業向けカストディを拡張へ

2025年11月3日、米リップル(Ripple)はデジタル資産ウォレット企業パリセイド(Palisade)の買収を発表した。
買収額は非公表で、同社の企業向け保管基盤「リップル・カストディ(Ripple Custody)」の強化を目的とする。
リップル、パリセイド買収でウォレット技術を統合
リップルは今回の買収により、企業向けのカストディ(資産保管)サービスを拡張する。
パリセイドのウォレット・アズ・ア・サービス(Wallet-as-a-Service)技術を統合し、銀行やフィンテック企業、一般法人が安全かつ即時にデジタル資産を管理できる環境を整備する方針だ。
パリセイドの技術は、MPC(マルチパーティ計算)(※)やゼロトラスト・アーキテクチャ、多チェーン対応、DeFi連携などを特徴とし、これらがリップルの「リップル・ペイメンツ(Ripple Payments)」にも組み込まれるという。
これにより、サブスクリプション型決済や暗号資産と法定通貨の入出金など、即時性が求められるユースケースにも対応できるとしている。
リップル・カストディはすでにAbsa Bank、BBVA、DBS、ソシエテ・ジェネラル・フォージ(Societe Generale – FORGE)など主要金融機関に採用されている。
監査証跡の改ざん防止や暗号学的承認プロセスを備え、複数ボールト間の横断的な資産管理も可能である。
リップルはこれまで、プライムブローカーのヒドゥン・ロード(Hidden Road)、ステーブルコイン決済基盤レール(Rail)、財務管理システムのジー・トレジャリー(GTreasury)などを相次いで買収し、約40億ドルを投じてエコシステムを拡大してきた。
今回のパリセイド買収は、その戦略の延長線上にあると言えそうだ。
※MPC(マルチパーティ計算):秘密鍵を複数の当事者で分割し、安全に取引を実行する暗号技術。
企業利用の加速とリスク管理 拡張戦略の行方
リップルの一連の買収は、企業決済や資金運用領域でのプレゼンスを高める狙いがあると考えられる。
ウォレット機能を自社サービスに統合することで、暗号資産・ステーブルコイン・RWA(実世界資産)の保管から決済までを一貫して提供できるようになり、企業の導入障壁を下げる効果が期待される。
特に、多チェーン対応や即時決済への対応は、金融機関やグローバル企業にとって業務効率化の恩恵が大きいはずだ。
暗号資産のボラティリティを回避しつつ、国際送金やサプライチェーン決済の高速化が実現できるだろう。
一方で、急速な拡張にはリスクも伴う。多層的なカストディとウォレット技術の統合は、運用体制の複雑化を招き、セキュリティ監査や法規制対応が不可欠となる。
各国で進む暗号資産カストディ規制との整合性が取れるかが、今後の焦点となるだろう。
総じて、リップルがカストディ領域で金融機関と並ぶ信頼性を築けるかどうかは、技術的な堅牢性と統合後の運用実績にかかっていると言える。
今回の買収は、ブロックチェーン企業から「デジタル資産インフラ企業」への転換を象徴する一手となりそうだ。
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