李大統領、来年度77兆円予算でAI時代の基盤構築を宣言

2025年11月4日、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は国会で施政方針演説を行い、2026年度予算案を通じてAI時代の基盤構築を目指す方針を示した。
AI関連予算は今年度比3倍以上に増額され、先端産業や国防、社会的弱者支援にも重点が置かれる。
AI先導国を目指す史上最大規模の予算案を提示
李在明大統領は4日、国会で行った施政方針演説で、2026年度予算案がAI時代を切り開く初の予算案であると位置付けた。
総額728兆ウォン(約77兆4000億円)は史上最大規模で、必要な予算は果敢に編成し、不要または急を要さない支出は大幅に削減すると強調した。
AI関連予算は10兆1000億ウォン(約1兆700億円)に増額され、今年度比で3倍以上となる。大統領はロボットやドローン、自動運転車とAIを結合させたフィジカルAI(※)の先導国達成を目指すとして、集中投資の意義を示した。
さらに、先端産業R&D投資35兆3000億ウォン(約3兆7600億円)、国防予算66兆3000億ウォン(約7兆500億円)の増額も発表した。
国防予算は韓国軍のスマート化と自主国防の実現を目的に8.2%増額される。
また、社会的弱者や低所得層向け予算も拡充され、障害者支援や災害対策予算の増額が盛り込まれている。大統領は、これらの予算を通じてAI時代への迅速な対応と国民生活の安定を同時に進める姿勢を示した。
一方、野党「国民の力」は施政方針演説を全面ボイコットし、抗議行動を展開した。
大統領は与野党間の立場の違いを認めつつも、国民と国の利益のための超党派協力を呼びかけた。
※フィジカルAI:AI技術をロボット、ドローン、自動運転車などの物理機器と組み合わせた応用分野。
AI集中投資の効果とリスク 国家戦略としての展望を考察
AI関連予算の急増は、韓国の国際競争力強化を後押しする可能性がある。
企業や研究機関はフィジカルAIを含む先端技術の開発に安定的な資金を得られるため、研究や実用化の進展が加速するとみられる。
国防、医療、物流など多分野での革新が進めば、経済全体の付加価値向上にもつながるだろう。
また、社会的弱者への支援予算増額により、AI時代の格差拡大を一定程度抑える効果が期待できる。新技術導入に伴う雇用変化に対応する再教育や自立支援策の充実は、長期的な社会安定に寄与すると考えられる。
一方、短期間での予算集中は既存産業や中小企業への資金圧迫リスクを伴う。
特定分野に偏った投資は技術の均衡的発展を妨げ、将来的な産業構造の偏りを招く恐れもある。野党との対立や予算承認の遅延がAI施策の実効性に影響する懸念も残る。
今後はAI投資が国内経済、国防力、社会保障にどの程度の相乗効果をもたらすかが注目されるだろう。戦略的資金配分の妥当性と実施スピードが、韓国のAI先進国としての地位を左右する重要なポイントとなりそうだ。
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