AMD、AI半導体需要が業績押し上げ 売上高見通しは市場予想を上回る

2025年11月4日、米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、第4四半期の売上高を約96億ドル(±3億ドル)と予想していると発表した。AI(人工知能)向け半導体の需要拡大が業績を牽引した。
AI需要が追い風に データセンターとPC部門が好調
AMDが発表した2025年第3四半期決算は、売上高92億5000万ドル、調整後1株利益は1.20ドルで、AI需要の追い風を鮮明にした。第3四半期の業績には、AMD Instinct™ MI308 GPU製品の中国への出荷による売上高は含まれていない。
クライアントおよびゲーミング部門の売上高は40億ドルで、前年比73%増。クライアント部門の売上高は過去最高の28億ドルで、前年比46%増。これは主に、Ryzen™プロセッサーの記録的な売上と製品ミックスの充実によりものである。
ゲーミング部門の売上高は13億ドルで、前年比181%増となった。
これは、セミカスタム製品の売上高増加とRadeon™ゲーミングGPUの堅調な需要によるものである。
AMDは10月、OpenAIと戦略的パートナーシップを発表し、AI半導体を供給する方針を明らかにしている。この契約により、数百億ドル規模の収益を見込む。2025年第4四半期の粗利益率も約54.5%と予想しており、安定的で収益力の底堅さを示した。
※データセンター:AIやクラウドサービスの演算処理を担う大規模サーバー群。AI半導体需要の中核市場となっている。
AI半導体競争が新局面へ 成長余地と供給制約のはざまで
AMDの堅調な業績は、生成AIの普及を背景にAI向け半導体需要を的確に取り込んだことが一因とみられる。ただし、AI半導体市場では依然としてNVIDIAが圧倒的なシェアを握っており、AMDがどの程度勢力を拡大できるかが今後の焦点となる。
AI演算に最適化したGPUの性能やソフトウェア対応力で依然として差があり、AMDは開発投資や顧客支援体制の強化を通じて競争力を高める必要がある。
市場構造の変化は、一定の追い風にもなっている。企業の間では、NVIDIA依存を回避する動きが徐々に広がりつつあり、AMDやインテルなど他ベンダーの選択肢を検討する例が増えている。こうした調達の多様化は、供給の安定化や価格競争の緩和といった副次的効果をもたらす可能性がある。
一方で、供給面の課題は残る。AMDは生産をTSMC(台湾積体電路製造)に委託しており、世界的な半導体供給網のひっ迫が続けば、出荷スケジュールに影響を及ぼすリスクがある。また、AI分野は技術革新のスピードが極めて速く、需要変動も大きいため、投資判断や在庫管理の難易度が高いことも指摘されている。
それでも、AI半導体市場の拡大余地は依然として大きい。データセンター用途に加え、AI機能を標準搭載するPCや、クラウドに依存せず端末側でAI処理を行うエッジデバイス(※)など、新たな市場が広がりを見せている。
AMDがこれらの分野をどのように開拓し、中長期的な収益構造を確立できるかが、次の成長局面を左右する鍵となる。生成AIがビジネス基盤の一部として定着する中で、AMDは市場の「有力な競争者」として存在感を強めつつある。
※エッジデバイス:クラウドに接続せず、端末側でAI処理を行う機器。
関連記事:
AMDとOpenAI、次世代AIインフラで提携 6GW規模のGPU導入へ

米AMD、対中規制で年15億ドル減収見通しもAI需要が業績を下支え












