STNet、遠隔GPUクラスター実証へ 液冷技術で次世代DC運用を探る

2025年11月4日、四国電力グループのSTNetは、離れた場所に設置されたGPUサーバーを高速・低遅延ネットワークで連係する「遠隔GPUクラスター」の実証実験を実施すると発表した。2026年度上期の開始を予定している。
STNet、分散GPUを統合する実証開始へ 液冷運用の検証も
STNetは、分散配置されたGPUサーバーをネットワークで統合し、巨大な演算資源として活用する「遠隔GPUクラスター」の実証実験を行う。生成AIや科学技術計算など、高度な処理を要する分野で需要が急増する中、同社は地方分散型の計算基盤構築に向けた技術確立を目指す。
実証では、2拠点のGPUサーバーを高速・低遅延ネットワークで接続し、単一の計算リソースとして利用する構成を検証する。ソフトウェア開発企業などと連携し、性能、操作性、運用性などを多角的に評価する計画だ。
また、GPUの発熱量増大に対応するため、液冷設備を用いた冷却効率の検証も実施する。液冷方式を採用する GPU サーバーが増えてきており、液冷技術が省電力化と安定稼働を両立できるかを検証する。
STNetは本実証を通じて、「遠隔GPUクラスター」および「液冷方式 GPU サーバーの運用」に関する知見を蓄積し、各種サービスの検討を進めていく。
地域分散と冷却技術の両輪で競争力強化へ 課題はコストと運用ノウハウ
今回の取り組みは、地方に分散するGPU資源を有機的に連係させ、都市部への集中を緩和する可能性を持つ。データを地域内で処理できれば、通信遅延の抑制や災害時のリスク分散にもつながる。AIやシミュレーション需要が高まる中、地方拠点の再評価を促す動きとして注目される。
一方で、液冷設備の導入には初期投資やメンテナンスの負担が大きいという課題が残る。
冷却液の循環管理や機器保守の専門知識が求められ、従来の空冷方式に比べ運用コストが高まる懸念もある。業界関係者からは「技術的には優れているが、コスト構造をどう最適化するかが鍵」との声も聞かれる。
とはいえ、エネルギー効率と持続可能性の両立は、今後のデータセンター運用において避けて通りにくいテーマだ。
今回の実証結果は、地方DCの新たなモデルケースとなる可能性があり、STNetが蓄積するノウハウは、国内の分散計算インフラや生成AI基盤整備に向けた取り組みにも影響を与えるとみられる。
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