ドコモ、通信品質改善へ5G基地局を3倍に増設 2026年度も投資継続で首位奪還狙う

2025年11月4日、NTTドコモは第2四半期決算説明会で、通信品質改善に向けた新たな5G基地局整備計画を発表した。
2025年度下期は上期比3倍のペースで基地局を増設し、2026年度も投資を拡大して通信品質でのナンバーワン返り咲きを目指す。
ドコモ、5G基地局を3倍に増設 主要都市と鉄道路線で品質改善へ
ドコモは2025年度下期、5G基地局の新設を上期比3倍のペースで進める方針を明らかにした。
2023年度末比で基地局数はすでに約1.3倍に増加しており、今後は全国主要都市や鉄道路線を中心に整備を加速する。
同社のデータによれば、全国主要都市中心部の平均スループット(※)は2024年3月比で約20%向上した。
新宿駅や池袋駅周辺では下り通信速度が20%超改善し、中央線快速(東京〜八王子間)では約40%、総武線快速(東京〜千葉間)では約50%向上したという。
第三者機関の評価も上向いている。J.D.パワーの2025年携帯電話サービス顧客満足度調査では、大手キャリア部門で通信品質トップを獲得した。
ドコモは2026年3月までに主要都市中心部の平均スループットを2024年3月比で40%、鉄道路線では50%以上改善する計画を掲げている。
設備投資額も拡大しており、2025年度上期は3,555億円と前年度比で980億円増加した。
前田義晃社長は「少なくとも今年度と来年度、徹底的に力を入れてやっていく」と述べ、2026年度も同規模の投資を継続する意向を示した。
なお、ドコモの上期の営業収益は3兆327億円(前年比1.3%増)に対し、営業利益は4,747億円(同14.2%減)だった。
ネットワーク強化や販促費増加が利益を圧迫したが、スマートライフ事業や法人事業では堅調な伸びを見せた。
※スループット:一定時間あたりに実際に転送できるデータ量。通信速度の体感を示す指標。
品質競争の焦点は「体感」へ 短期減益を許容する中長期戦略
ドコモの積極投資は、短期的には減益を伴うが、通信事業の信頼獲得に向けて中長期的な意義が大きいと思われる。
5Gエリアの整備は競合各社も強化しており、品質競争は「数値」から「体感」へと軸足を移している。
生成AIやメタバースなど、大容量通信を前提とした新サービスの普及を背景に、通信品質の差はブランド評価に直結するだろう。
他方で、投資負担の増大や人口減少地域での収益性低下といった課題も残る。
効率的な基地局運用やAIによるトラフィック最適化が、今後の採算確保の鍵となるだろう。
ドコモは「品質ナンバーワン」復権を旗印に、通信体験の向上を起点としたブランド再構築を図る。
短期の利益よりも顧客満足度を優先する姿勢は、次世代通信市場の再編において重要な意味を持つと考えられる。
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