エヌビディア、韓国に26万個超のAIチップ供給 国家主導で次世代産業基盤を構築へ

2025年10月30日、米半導体大手エヌビディアは、最先端AI(人工知能)チップ「ブラックウェル」を26万個以上、韓国政府とサムスン電子など主要企業に供給すると発表した。
韓国政府・財閥連合で26万個規模のAI基盤整備へ
エヌビディアは韓国政府およびサムスン電子、SKグループ、現代自動車グループに対し、最新AIチップ「ブラックウェル(※)」を26万個以上供給する。
ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は声明で「韓国は製造業で世界を刺激してきた。今、世界的な変革を推進する新たな輸出品としてインテリジェンスを生産することができる」と述べた。今回の発表は、韓国・慶州で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の期間中に、フアン氏と李在明大統領、主要財閥トップが会談した直後に行われた。
韓国政府は、5万個以上のブ最新チップを用いたAIインフラ構築を計画。サムスン電子やSKグループ、現代自動車はそれぞれ最大5万個を自社工場や自動運転技術開発に投入し、生産ラインや設計工程の高度自動化を図る。
また、韓国最大の検索エンジン企業ネイバーも6万個のエヌビディア製チップを調達予定だ。
※ブラックウェル:エヌビディアが2024年に発表した最新世代のAI向けGPUアーキテクチャ。前世代「ホッパー」より演算性能と電力効率を大幅に向上させ、大規模生成AIの学習や推論に特化している。
AI国家戦略の追い風と依存リスク 競争優位の持続性に課題
今回の契約は、韓国が掲げるAI国家戦略を進めるうえで大きな節目となる可能性がある。エヌビディアの高性能GPUを活用することで、生成AIや自動運転、医療解析など多分野での応用拡大が期待される。
特にサムスン電子は、自社の製造プロセスにAIを導入し、半導体の歩留まりや開発効率の向上を図るとみられる。こうした産官学連携によるAI基盤投資は、データを中心とした新たな産業構造への転換を促す可能性がある。
一方で、AI基盤の中核を海外製チップに依存する構造的リスクも懸念される。米国による輸出規制や地政学的摩擦の影響で、供給の安定性が揺らぐ可能性は否定できない。
また、AIチップの調達コストが高止まりすれば、中小企業がAI導入に踏み出せず、産業格差が拡大する懸念もある。政府による支援策や代替供給網の整備が求められるだろう。
今後、韓国が自国開発のAI半導体や関連技術をどこまで育成できるかが焦点となる。エヌビディアとの連携を足がかりに、国産チップ開発やAI人材育成を進められるかが、国家の技術的自立を左右する鍵になると考えられる。
今回の大型契約は、韓国がAI覇権競争の最前線に立つ一方で、その競争力を持続可能な形で確立できるかどうかを試す局面とも言えそうだ。
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