LINEヤフー、約7,000人のエンジニアを対象にAI実践研修 生成AI時代の開発力強化へ

2025年10月30日、LINEヤフー株式会社は社内エンジニア約7,000名を対象に、実務で使えるAI活用スキルを習得する「Orchestration Development Workshop」を開始した。生成AIを安全かつ効果的に活用できる人材を育成し、開発効率と生産性の向上を狙う。
LINEヤフー、AI実装力を磨く社内ワークショップを開始
LINEヤフーは、開発業務に携わる全エンジニアを対象に、実践的なAI活用スキルを高める新たな研修プログラム「Orchestration Development Workshop」を立ち上げた。
10月30日から月1〜2回の頻度で実施し、日本語・英語・韓国語で展開することで、グローバルな開発組織全体にAI技術の知見を共有する。
本ワークショップでは、生成AIや関連ツールを開発フローに統合し、再現性のある“型”として運用する「AIオーケストレーション開発(※)」を中心に扱う。LLMOps(大規模言語モデルの運用)などの先端領域をリードできる人材の育成も視野に入れる。
初回は、AIコードアシスタントを活用したPull Request(PR)レビュー業務の効率化をテーマとし、自動要約やコメント案生成など、レビュー工程を短縮する手法を実演した。
講義は、実際の業務シーンを模した実演形式で進行。インストラクターと模擬参加者がZoomウェビナー上で対話し、参加者から寄せられる質問をリアルタイムで反映する。
「知識を得る場」から「スキルを育てる場」へと進化させた点が特徴だ。
同社はすでに「Yahoo! JAPAN」アプリのAIアシスタント機能や「LINE AI」などで生成AIを実装しており、累計62件の活用事例を展開。7月にはAIが設計・実装・検証を支援する「Ark Developer」を導入し、開発現場の生産性を高めている。
今後は、AIが複数タスクを連携して処理する方法や、社内ナレッジの自動整理・検索といったテーマが展開予定だ。
※AIオーケストレーション開発:生成AIやツールを開発フローに組み込み、タスクを連携・自動化する手法。再現性と拡張性を重視し、組織全体の開発効率を高めるアプローチ。
AI人材の育成が競争力の鍵に 開発組織の生産性を再設計
LINEヤフーが本ワークショップを通じて目指すのは、単なるスキルアップではなく「AIを使いこなす開発文化」の定着だと言える。
生成AIの進化に伴い、設計・実装・検証といった各工程が高速化する一方で、企業間の開発力格差も拡大している。AI実装力を持つエンジニアがチームの中核を担うことは、国内外のAIエンジニアリング市場で優位性を確立できる可能性がある。
一方で、急速なAI導入にはリスクも伴う。生成AIが出力する情報の信頼性や、開発判断における責任分担の明確化が今後の課題となるだろう。
今後、このようなAI研修は開発文化の再設計へ発展し、AIと人間の役割分担の明確化が焦点になると考えられる。定義なき設計は倫理的・法的リスクが顕在化する恐れもある。
AIの浸透が進むほど、創造性をいかに人間の判断で制御し、責任ある開発へと導くかが、企業競争力を左右する重要な要素となるだろう。
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