文科省、全国の教育委員会にクマ対策を通知 通学路点検と注意喚起を要請

2025年10月30日、文部科学省は全国の教育委員会などに対し、児童生徒の安全確保を目的とした「クマ出没への対応」に関する通知を発出した。クマの被害が各地で相次ぐ中、通学路の点検や注意喚起を行うよう求めている。
文科省、クマ出没への学校安全対策を全国通知
文部科学省は、全国の教育委員会や私立学校主管部課などに宛て、「クマ出没に対する学校及び登下校の安全確保について」と題する事務連絡を発出した。
通知は、環境省が改定した「クマ類の出没対応マニュアル」を参照し、学校現場での具体的な対応策を検討するよう求めている。
背景には、近年、全国の市街地や住宅地でのクマ出没が相次ぎ、児童生徒の通学中に危険が及ぶ事例が増加していることがある。
特に、これまでクマが出没しなかった地域でも目撃が報告されており、全国的に警戒が必要な状況が続いている。
通知では、通学路の点検や必要に応じたルート変更、地域警察や自治体の鳥獣被害対策部局との連携を求めている。
また、クマの出没情報を迅速に共有できる連絡体制の整備や、児童生徒への安全指導も重要事項として挙げられている。
周知にあたっては「一律ではなく地域の実情に応じた対応を行う」と明記されているほか、教育委員会には効率的で実効性のある周知方法の検討を求めており、必要な学校や地域に重点的に情報を届けることで、安全対策の効果を高める考えだ。
学校防災体制の再構築が急務 地域連携と教育現場の課題
今回の通知は、自然災害以外の「野生動物リスク」に対しても学校が主体的に備える必要性を示したものだと考えられる。学校安全の概念が、これまでの地震・台風対応から、生態系変化によるリスクマネジメントへと広がりつつある。
本件は、自治体・警察・学校の連携を促す契機にもなりそうだ。
地域ぐるみの安全網が構築されれば、登下校の安心感が高まり、保護者や地域住民の信頼にもつながり得る。
子ども自身が危険を予測し、回避する能力を学ぶ教育的意義もあるだろう。
一方で、現場の負担増加という課題も残る。
通学路の再点検や情報共有体制の整備には人的・時間的コストがかかるため、特に小規模自治体では実施が難しい場合も想定される。また、専門知識を持つ職員の不足も、実務面での障壁となりうる。
今後は、AIによる出没予測や自治体間でのデータ連携など、テクノロジーの導入も検討課題となるだろう。自然と共存する地域安全教育の在り方が、学校防災の新たな柱として問われている。
文部科学省 クマの出没に対する学校及び登下校の安全確保について
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