JR西日本、ローカル線の収支を公開 100円の収入に最大9,945円の費用 地域交通の見直しへ

2025年10月29日、JR西日本は輸送密度2,000人未満のローカル線区に関する経営状況を公表した。1987年以降、利用者数が大幅に減少しており、一部区間では100円の運輸収入を得るのに9,945円の費用がかかる実態が明らかになった。
JR西日本、赤字ローカル線の収支を公表 収支率は一桁台も
JR西日本は10月29日、輸送密度が1日2,000人未満のローカル線32区間の収支状況を公表した。対象は山陰線や芸備線、木次線などを含む19路線で、2022〜2024年度の3カ年平均をもとに算出されている。
発表によると、最も営業効率が低かったのは広島県の芸備線・東城〜備後落合間で、営業係数は9,945円に達した。
これは100円の収入を得るために9,945円の費用がかかることを意味する。同区間の収支率は1.0%にとどまり、輸送密度も1日わずか19人だった。
このほか、姫新線の中国勝山〜新見間では収支率2.2%、木次線の出雲横田〜備後落合間は2.7%など、赤字が深刻な区間が複数確認された。
1987年度と比較すると、平均通過人員が3分の1以下に減少している線区が多く、過疎化やマイカー依存の進行が影響しているとみられる。
JR西日本は2022年度から収支情報を公表しており、地域との協議を通じて交通体系の再構築を促す姿勢を示している。
低収支区間の改善策と地域交通の今後
低収支のローカル線は、運営効率化や費用削減が急務となるだろう。
まず、需要の少ない区間では運行本数や車両規模を柔軟に調整することで、一定のコスト抑制が見込める。沿線イベントや観光ルートとの連携も、地域住民や観光客の利用を促す効果が期待できる。
ただし、過度なコスト削減は地域の移動利便性低下につながり、生活交通としての価値を損なうリスクもある。したがって、線区ごとの特性を踏まえたきめ細かな施策が求められる。
自治体と共同で実施する乗車データ分析や交通需要調査も今後の意思決定に不可欠だと考えられる。
将来的には、デジタル技術の活用による需要予測や効率的な運行スケジューリングの導入が進むとみられる。AIやIoTを用いた車両・運行管理の高度化により、人件費やエネルギー消費の最適化が進めば、収支改善の効果が高まる可能性がある。
総じて、低収支区間の課題解決は単なるコスト削減にとどまらず、地域の交通体系全体の持続可能性を高めることにつながると考えられる。地域住民との協働を軸に、効率性と利便性のバランスを追求する施策が今後の鍵となるだろう。











