コインベース、「Payments MCP」正式提供 AIエージェント自律決済を可能に

2025年10月23日、米暗号資産取引所コインベース(Coinbase)は、AIエージェント向け決済ツール「Payments MCP」の正式提供を開始したと発表した。
9月に公開されたベータ版を拡張したもので、複数の大規模言語モデル(LLM)に対応し、オンチェーン上での自律的な支払いを可能にする。
Coinbase、AIエージェント決済基盤「Payments MCP」正式リリース
コインベースは、AIエージェントがオンチェーン上でウォレットの生成や資産管理、支払いなどを自律的に行えるツール「Payments MCP」の正式版を発表した。
今回のリリースは、2025年9月に提供された開発者向けベータ版を拡張したもので、ClaudeやGemini、Codexなど複数の大規模言語モデルをサポートする。
利用者はメールアドレスのみでウォレットを作成でき、コードを記述せずに支出上限や権限を設定できる。
基盤には、HTTPの未使用ステータスコード「402 Payment Required(※)」を用いたオープンプロトコル「x402」が採用されており、APIリクエスト内で直接支払いを完結できる設計だ。
これにより、従来の手動チェックアウトやサブスクリプション登録を経ずにオンデマンドで決済を実行できる。
正式版では新たに「x402 Bazaar Explorer」が統合され、AIエージェントが支払い可能な外部APIやサービスを探索できるようになった。
また、法定通貨から暗号資産への変換やゲストチェックアウト機能にも対応しており、対応地域では即時利用が可能である。
コインベースは公式ブログで、本ツールの目的をAIエージェントが人間と同様に経済活動を行うための基盤構築と説明している。
コインベースは2023年にAI開発者向けツール「AgentKit」を公開していたが、Payments MCPはその進化版と位置づけられる。
AgentKitが限定的な環境にとどまっていたのに対し、今回の正式版はより実用的なスケールでの運用を可能にしている。
※402 Payment Required:HTTP仕様で定義されながら未使用だったステータスコード。コインベースはこれを活用し、API通信内での自動決済プロトコル「x402」を提唱している。
AI経済圏の中核を狙う 自律決済がもたらす可能性と課題
Payments MCPは、AIエージェントが人間の関与なしに経済活動を行うためのインフラに位置づけられる。
AIがAPI利用料やクラウドリソース、クリエイター報酬などを自ら支払うことで、経済活動の自動化と効率化が進むと考えられる。
これにより、AIが「稼ぎ」「支払い」「再投資」する循環的な経済構造が現実味を帯びてきたと言える。
一方で、自律的に資金を扱う仕組みにはリスクも存在する。
AIが誤って不正な取引を行うことに対する防止策や、支出の透明性・ガバナンスをどう担保するかが課題となるだろう。
特に、AI同士が相互に取引を行う「AI to AI経済」の拡大に向けては、セキュリティと法的枠組みの整備が不可欠だと考えられる。
AIが自律的に経済行動を取る未来に向け、今後同社がどのような動きを見せるか、引き続き注目したい。
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