日立とドコモ、AIエージェントでシステム運用業務の効率化を実証

2025年10月28日、日立製作所は、NTTドコモと共同で実施した、生成AIを活用したシステム運用業務向けAIエージェントの実証結果を発表した。試験運用で作業時間の大幅削減を確認し、国内の情報システム部門での活用拡大が期待される。
生成AI搭載エージェントでシステム運用業務を自動化
日立とドコモは、ドコモ情報システム部を対象に、生成AIを基盤としたAIエージェントの実用化に向けた共同実証を行った。日立は自社の生成AI活用基盤とAIエージェントの構築ノウハウを提供し、ドコモは大規模システム運用の知見を共有する形で協力した。
実証では、インシデント事例の検索・対応、周知文作成の自動化、パッチ適用判断の3つのユースケースを試験運用した結果、特にパッチ適用判断では作業時間を50%以上短縮できた。
従来は複雑な情報検索や手作業による判断が必要だったが、AIエージェントにより迅速かつ正確に処理できることが確認された。
背景には、労働人口減少やシステム運用業務の高度化による人手不足がある。規制や技術変化に伴う知識の増加で業務の属人化が進み、ノウハウ継承の困難さが課題となっていた。
日立はこうした課題にAIを組み合わせることで、業務効率化と知見の継承を図ろうとしている。
今後、両社はAIエージェントの適用範囲拡大や利用者増加を目指す。日立はAIへのリフト・シフトの考え方を他の業界にも展開し、システムエンジニアの業務変革や社会全体の生産性向上に貢献していく考えだ。
AI導入がもたらす効率化と運用リスクのバランス
今回の実証で示されたAIエージェントの導入効果は、作業時間短縮と業務負荷軽減という明確なメリットをもたらす。
担当者が膨大な情報を検索・整理する時間を削減できるため、人的リソースをより高度な業務や判断に振り向けることが可能になる。結果としてチーム全体の生産性が向上すると考えられる。
さらに、AI活用基盤の普及に伴い、システム運用知識の標準化や暗黙知の形式知化が進むことも予想される。これにより、属人化していた業務の効率化だけでなく、技術者間の知識共有や新任者の教育負荷軽減にも寄与するだろう。
一方で、AIによる自動化には判断ミスや過信のリスクも伴う。
パッチ適用やインシデント対応の誤判定はシステム全体に影響を及ぼす可能性があるため、最終確認プロセスの重要性は依然高い。運用部門ではAI導入後も人的監督を適切に維持する仕組みが求められるだろう。
将来的には、今回のAIエージェントの成果をもとに、複雑なITシステム全般への適用範囲拡大や自動化レベルの向上が期待される。適切な運用とリスク管理を両立させることで、企業の持続可能な成長に貢献する社会インフラの安定運用が実現できると考えられる。
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