京王バス、完全キャッシュレス化で乗降時間短縮と定時運行へ

2025年10月28日、京王電鉄バス株式会社は国土交通省の推進方針に沿い、完全キャッシュレスバスの実証運行を調布営業所管内から順次開始すると発表した。運賃支払いの電子化で利便性と運行効率を向上させる狙いだ。

現金不要で乗降時間短縮、定時運行も目指す

京王電鉄バスは2025年度から、国土交通省の推進する完全キャッシュレスバスに対応する取り組みを本格化させた。対象は調布営業所管内路線で、順次運行エリアを拡大していく計画である。

この背景には、バス業界が直面する深刻な運転者不足や、運転者の業務負担増大の課題がある。従来の現金処理には時間がかかり、運行の定時性にも影響を与えていた。
キャッシュレス化はこれらを改善し、乗降時間短縮と定時運行の確保に直結する施策である。

支払い方法は、交通系ICカードや主要クレジットカードのタッチ決済、ICカード定期券やモバイル定期券、1日乗車券や企画乗車券などのデジタルチケットがある。交通系ICカードは駅やコンビニで事前チャージできるほか、オートチャージサービスにも対応している。

京王バスは、2008年の交通系ICカード導入以降、金額式IC定期券「モットクパス」やモバイルPASMO・Suicaへの対応など、段階的にキャッシュレス環境を拡大してきた。
2025年3月には調布営業所でクレジットカードによるタッチ決済機器を導入しており、今回の完全キャッシュレス化はその延長線上にある。

キャッシュレス化で運行効率化　課題と展望も

完全キャッシュレス化は、乗客の利便性向上と運転者負担軽減を両立させる可能性を秘めている。支払いが電子化されることで、バス停での乗降時間が短縮され、定時運行がより安定化するだろう。
デジタル履歴により、運賃管理や利用傾向の分析も容易になるため、路線運営の最適化にも寄与すると考えられる。

一方で、現金を使用できない点は高齢者や一部観光客にとって利用障壁となる恐れがある。
運用開始当初は、支払い方法の理解やICカードのチャージに慣れる必要があるため、適切なサポート体制の整備が不可欠となりそうだ。

経営面では、現金機器の維持費削減によるコスト圧縮が見込まれるが、初期導入費用やタッチ決済端末の整備といった投資負担も無視できない。ROI（投資回収期間）を見極めた慎重な運用が求められる。

今後は、京王バスの取り組みが他社への波及効果を生み、国内バス業界全体でキャッシュレス化が進む可能性がある。利便性向上と効率化の両立を実現できれば、公共交通の利用促進や運行継続性の強化にもつながると考えられる。

京王電鉄バス株式会社 プレスリリース

関連記事：

福島県矢吹町のAIオンデマンドバス、泉崎・玉川両村へ運行拡大　地域間移動に変革

あわせて読みたい

福島県矢吹町のAIオンデマンドバス、泉崎・玉川両村へ運行拡大　地域間移動に変革 2025年6月4日、福島県矢吹町はAI搭載オンデマンドバス「のるーと矢吹」の運行区域を、隣接する泉崎村と玉川村に拡大すると発表した。住民の移動利便性と地域活性化を目...