米サークル、USDCがスタークネットにネイティブ対応 zkロールアップを採用

2025年10月23日、米ステーブルコイン発行企業サークル(Circle Internet Financial)は、米ドル建てステーブルコイン「USDC」のネイティブ型トークンをイーサリアムのレイヤー2(L2)「スタークネット(Starknet)」に近日対応させると発表した。ゼロ知識証明を活用するL2での対応により、ブリッジリスクの軽減と流動性拡大が期待される。
ネイティブUSDCがスタークネットに正式対応へ
サークルが発行する「USDC」のネイティブ型トークンが、イーサリアムL2「スタークネット」で利用可能となる。
スタークネットは、スタークウェア(StarkWare)が開発したzkロールアップ技術「zk-STARKs(※1)」を採用するスケーリング基盤であり、現在はスタークネット財団によって運営されている。
スタークネットではすでに、ブリッジ(※2)経由で発行された「USDC.e」が流通しているが、ネイティブ対応によってサークルが公式に発行し、常に米ドルと1対1で償還が可能なUSDCが直接利用できるようになる。
これにより、価格乖離(ディペグ)が起こる可能性が低くなり、ブリッジのセキュリティリスクが大幅に低減される見込みだ。
サークルはまた、USDCをチェーン間で直接転送できる「クロスチェーン転送プロトコル(CCTP)」の最新版「CCTP V2」もスタークネットに導入予定としている。
CCTPは「バーンアンドミント」方式を採用し、転送元のトークンを消滅(バーン)させて転送先で新たに発行(ミント)する仕組みを持つ。これにより、ブリッジを経由せずにネイティブトークンとしてUSDCを移動でき、発行枚数の増加問題を抑制できるという。
この仕組みが普及することで、チェーンごとに異なるUSDCが混在する問題も段階的に解消される見通しだ。
現在ネイティブ版USDCは、アービトラム、アバランチ、ベース、ソラナ、OPメインネットなど28のチェーンで展開されており、今後モナドにも対応予定とされる。
CCTP V2は、イーサリアム、BNBチェーン、ポリゴンPoSなどの18チェーンに対応している。
※1 zk-STARKs:ゼロ知識証明(zero-knowledge proof)の一種で、プライバシーを保ちつつ計算結果の正当性を検証する暗号技術。データサイズが小さく高速処理が可能な点が特徴。
※2 ブリッジ:異なるブロックチェーン間で暗号資産を移動させるための技術やプロトコルのこと。この仕組みにより、一方のチェーン上の資産をロックし、もう一方のチェーンで同等の資産を発行する。特定のトークンを異なるチェーン間で利用可能にする「橋渡し」の役割を果たす。
L2間の資金移動を促進 USDC流動性の新たな中心に
今回のスタークネット対応は、USDCのマルチチェーン戦略をさらに加速させる動きといえる。
CCTPの導入により、ユーザーはブリッジを介さず安全かつ即時に資金を移動できるようになり、L2間での決済・DeFi取引がよりスムーズになる。特に、zkロールアップを採用するスタークネットは高いセキュリティと低コストが特長であり、これまでガス代や遅延に課題を抱えていた取引環境の改善が期待される。
一方で、既存の「USDC.e」からの移行プロセスや、DeFiプロトコル側での対応整備には時間を要する可能性が高い。スターゲート経由でのブリッジ流通が根強い現状では、完全なネイティブ移行には段階的な統合が必要になるだろう。
今回の対応は、USDCが目指す「マルチチェーンでの統一的ドル流通」の中核を担う動きと考えられる。
USDCが主要L2でシームレスに動くことで、分断されていたブロックチェーン間の流動性が統合され、Web3決済の基盤としての存在感をさらに高める可能性がある。
関連記事:
マスターカード、東欧・中東・アフリカでステーブルコイン決済を初導入

USDCは大丈夫?価格暴落の理由と展望を考察












