豪当局、AI搭載「Microsoft 365」を提訴 高額プラン誘導で消費者法違反の疑い

2025年10月27日、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は、米マイクロソフトがAIアシスタント「コパイロット(Copilo t※)」を組み込んだ「Microsoft 365」の高額プランへ顧客を誘導したとして、同社を提訴したと発表した。価格上昇と情報開示の不十分さが、同国の消費者法に抵触する可能性があると指摘されている。
AI搭載で料金最大45%増 「旧プラン非表示」が提訴の焦点に
ACCCは、マイクロソフトがAI機能「コパイロット」を統合した新プランを「Microsoft 365」の個人および家族向けサービスに導入した後、利用者をより高額な契約へと誘導したと主張している。個人プランは年間159豪ドルと従来比で約45%増、家族プランは179豪ドルで約29%の値上げとなった。
問題視されたのは、AI非搭載の「クラシック」プランが依然利用可能であったにもかかわらず、その選択肢を十分に明示していなかった点だ。ユーザーが解約手続きを進めるまで安価なプランの存在を確認できない仕組みは、重要情報の不開示にあたるとされる。ACCCは、これにより約270万人の顧客が誤解を招く形で高額プランへ移行した可能性があると述べている。
提訴の対象はマイクロソフト・オーストラリアおよび親会社の米マイクロソフトであり、同委員会は罰金や消費者救済、差止命令を求めている。豪消費者法違反に対する罰金は、最大で5000万豪ドル、または不当利益の3倍、あるいは違反期間中の調整後売上高の30%のいずれか大きい額とされる。マイクロソフトは現時点でコメントを控えている。
※コパイロット(Copilot):マイクロソフトが提供する生成AIアシスタント機能。WordやOutlook、Teamsなどで文章生成や要約、スケジュール管理を支援する。Microsoft 365に統合され、個人利用から企業導入まで拡大している。
AI有料化の波紋 透明性向上と価格格差のはざまで
今回の訴訟は、生成AIが日常ソフトに統合される流れの中で、「AIの価値」と「消費者負担」の関係を改めて考えさせる契機となった。AI搭載による利便性の向上は確かであり、コパイロットの自動要約や文書生成といった機能が生産性を高める点は評価できる。
一方で、利用料の上昇をどの程度まで正当化できるかについては、議論が分かれるところだ。
企業にとってAIは差別化の鍵となるが、価格設定や情報開示のあり方を誤れば、利用者の信頼を損ねるリスクがある。特に、旧プランの存在が十分に示されていなかったとすれば、収益構造の透明性をめぐる課題が浮き彫りになったともいえる。
こうした問題提起は他国の規制当局にも注目される可能性があり、今後、AI機能を含む有料サブスクリプションの情報開示義務が議論される契機となるかもしれない。
一方で、透明な料金体系が整備されれば、利用者がニーズに応じてAI機能を選択できる環境が整い、結果的にAI活用の裾野拡大にもつながる可能性がある。今回の事例は、AI時代における公正な価格設定とユーザー主権のあり方を考える上で、重要な一歩といえるだろう。
関連記事:
マイクロソフトをAI価格操作疑惑で提訴 オープンAIとの独禁法違反を主張
https://plus-web3.com/media/latestnews_1000_5756/
マイクロソフト、「365プレミアム」発表 AI機能を統合し月額19.99ドル
https://plus-web3.com/media/latestnews_1000_5573/











