アスクル、ランサムウェア被害で物流システム停止 社内外100人規模で復旧対応

2025年10月22日、アスクル株式会社は、ランサムウェア感染によるシステム障害の最新状況を公表した。
物流システムの停止により受注業務が継続して中断しており、社内外約100人規模の調査・復旧チームを編成して対応を進めている。
ランサムウェア感染で物流機能が停止 アスクル、100人規模で復旧体制を構築
アスクル株式会社は、10月19日に発生したランサムウェア感染により、主要な物流システム(WMS:Warehouse Management System)に障害が発生したと発表した。
これにより、同社が運営する「ASKUL」「ソロエルアリーナ」「LOHACO」での受注を停止している。
同日午前、外部からの不正アクセスを検知し、感染の疑いがあるシステムを切り離すとともに、ネットワークを遮断。16時30分には各サービスでの受注を停止した。
感染発覚後、同日14時に対策本部を設置し、障害の範囲特定と影響の詳細調査を進めている。
調査には、LINEヤフー株式会社および外部セキュリティ企業のエンジニア約30名が参加し、社内エンジニア約60〜70名とともに100名規模の調査・解析体制を構築した。
システムログの精査と被害範囲の特定を継続している。
障害の影響は物流センターの入出荷業務に及び、グループ会社ASKUL LOGIST社が受託する3PL(※)事業も停止中である。
現時点では個人情報や取引先情報の外部流出は確認されていないが、確認され次第速やかに公表する方針を示している。
※3PL(Third Party Logistics):企業が物流業務を外部専門業者に委託する仕組み。倉庫管理や配送などを包括的に請け負う。
危機対応で企業信頼の分岐点に 情報開示と再発防止策が焦点
アスクルの今回の対応は、被害の早期封じ込めと復旧体制の迅速な構築という点で評価できる。
特に、社外の専門家を含む100人規模のチームを編成した判断は、サイバー攻撃の拡大を防ぐ上で有効だと考えられる。
一方で、物流停止の長期化は取引先や顧客への影響を避けられず、企業イメージや信用の回復が今後の課題となる。
また、ランサムウェアによる被害は、業種を問わず国内外で増加傾向にある。
バックアップ体制の強化や多層防御の徹底など、根本的なセキュリティ改革が求められる局面にある。
今回の事例は、サプライチェーンを支える基幹システムの脆弱性を再認識させる契機ともなった。
アスクルが今後の進捗をどのように公表し、どこまで透明性を確保できるかが、企業としての信頼再構築の分岐点になるといえる。
復旧後の再発防止策と情報管理の厳格化が、同社のみならず日本企業全体の危機対応モデルとして注目されるだろう。
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