パナソニックHD、AIが自らの生成結果を改善する新技術「Reflect-Dit」を開発

2025年10月17日、パナソニックホールディングス株式会社と米パナソニックR&Dカンパニー オブ アメリカ(PRDCA)は、UCLAの研究者と共同で、AIが生成した画像を自ら振り返って改善する画像生成技術「Reflect-Dit(リフレクト・ディット)」を開発したと発表した。
本技術はAI・Computer Vision分野の国際会議「ICCV2025」に採択されている。
AIが推論時に自律改善 Reflect-Ditを共同開発
Reflect-Ditは、学習を行わずにAI自身が生成画像を改善できる革新的なアプローチである。
パナソニックHDとPRDCAは、UCLAの研究者と共同で、AIが推論時に自らの生成結果を分析し、改善点をテキストとして再入力する新手法を構築した。
従来の画像生成AIは、大規模データや膨大な学習時間を要し、開発コストが課題となっていた。
また、生成精度を高めるためには「Best-of-N」と呼ばれる、大量生成・選別方式が主流だった。
Reflect-Ditはこの非効率性を解消するもので、視覚と言語を統合するマルチモーダルAI領域における新たな進展となる。
技術的には、生成された画像とテキストプロンプトを視覚言語モデル(VLM)が照合し、誤りや不足をテキストで抽出する。
その内容をAIが再入力として受け取り、次の生成に反映する仕組みを採用した。
評価実験では、従来手法と比較して「物体の個数」「属性」「位置」といった評価項目で性能が向上し、同等品質の画像を約5分の1の生成回数で得られることが確認された。
この成果は、10月19から23日にアメリカ・ハワイで開催されるIEEE/CVF主催の国際会議「ICCV2025」で発表される予定であり、Reflect-DitはAI推論技術における新たな研究潮流として位置づけられている。
省学習型AIの実用化へ 産業応用の期待と課題
Reflect-Ditは、AIが推論段階で自ら結果を改善する「リフレクティブAI」の実現に向けた重要な一歩といえる。
学習データの再構築を必要としないため、既存の生成AIにも導入が容易であり、開発負担や計算コストを大幅に削減できる可能性がある。
パナソニックHDは、住宅などの分野での応用を見据えている。
たとえば住宅提案におけるレイアウトや照明デザインの生成にReflect-Ditを導入することで、営業担当者が現場で迅速に高品質なカタログを作成でき、業務効率化が期待される。
一方で、AIが自律的に結果を修正する仕組みは、生成内容の一貫性や説明可能性(※)の確保といった課題も残る。
とりわけ商用利用の場面では、改善過程の透明性や倫理的基準の設定が不可欠になるとみられる。
それでも、Reflect-DitはAIが「学ばずして賢くなる」方向性を示す技術として注目でき、パナソニックHDは今後も社会実装を視野にAI研究を加速させる方針を示している。
※説明可能性:AIがどのような根拠や判断過程を経て出力を生成したかを人間が理解・検証できる性質。透明性確保の観点からAI倫理の重要な要素とされる。
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