ANA、生成AIプラットフォーム「neoAI Chat」を本格導入 業務効率と安全運航を両立へ

2025年10月16日、全日本空輸株式会社(ANA)は、株式会社neoAIが開発した生成AIプラットフォーム「neoAI Chat」を航空機オペレーション部門へ本格導入した。
空港、整備、客室、運航といった現場での情報検索や報告書作成を効率化し、安全運航と顧客体験の向上を同時に実現する狙いだ。
ANA、全オペレーション部門で生成AI「neoAI Chat」を展開 neoAIも企業現場向けAI開発を加速
ANAは10月より、生成AIプラットフォーム「neoAI Chat」を航空機オペレーション部門全体へ導入した。
対象は空港、整備、客室、運航などANAグループの主要現場であり、膨大な規程やマニュアルをAIが解析・統合することで、現場スタッフが対話形式で必要情報を即座に取得できる仕組みを構築する。
同システムの導入により、マニュアル検索にかかる時間は従来比で約90%短縮され、報告書や教育資料の作成工数も約75%削減されるという。
これにより、現場の判断スピードを高めるとともに、社員がより創造的で付加価値の高い業務に集中できる環境を整備する。
ANAは2024年8月から成田空港で試験導入を実施しており、運航現場での情報検索効率や判断精度の向上が確認されたことを踏まえ、全社的な展開を決定した。
システムはANAの自社クラウド基盤上で稼働し、機密情報を厳重に保護する設計が採用されている。
また、開発元のneoAIも本導入を機に「neoAI Chat」の高度化を加速させる方針を明らかにした。
企業現場の声を反映した国産AI基盤として、業務現場に密着したAI活用モデルの確立を目指すとしている。
現場主導のAI活用が進展 航空業界DXの加速にも期待
今回の導入は、生成AIを現場主導で実用化する先進的な事例といえる。
航空機運航という安全性が最優先される領域で、AIが情報支援ツールとして定着すれば、業界全体の業務標準が変わる可能性がある。
特に、複雑なマニュアル検索や膨大な文書処理を自動化できる点は、熟練者依存の業務を平準化し、属人化を防ぐ効果がある。
一方で、生成AIの回答品質を常に検証・改善する体制が求められる。
誤回答による誤操作や情報の齟齬が安全運航に影響を及ぼさないよう、AIと人間の協働設計が重要となるだろう。
ANAが採用した自社クラウド基盤での運用は、セキュリティと精度を両立する有効なモデルと評価できる。
neoAI側の開発加速により、日本企業に適した生成AI活用モデルの進化が期待される。
航空業界のみならず、製造や物流など現場業務のDX推進にも波及する可能性があり、国産AIの実装事例として注目を集めるだろう。
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