バイナンス、急落市場で430億円補償 影響ユーザーに迅速対応

2025年10月13日、海外大手暗号資産取引所バイナンスは、10月10日の市場急変動に伴い、影響を受けたユーザーに総額2億8,300万ドル(約430億円)の補償を実施したと発表した。
バイナンス、市場急落で発生した強制清算を補償
バイナンスは10月10日夜、世界的なマクロ経済イベントを背景に市場全体で売りが集中したことで、暗号資産市場が急落したと説明している。
同社によると、先物および現物取引を支えるマッチングエンジンやAPIは正常に稼働していたが、21時18分(UTC)以降、一部システムモジュールで短時間の技術的な不具合が発生したという。
この影響で、利回り運用サービス「アーン(Earn)」で取り扱われるUSDE、BNSOL、WBETHなどの資産がディペッグ(※)し、担保として使用していたユーザーの一部で強制清算が生じた。
バイナンスは影響を受けたユーザーに対し補償を24時間以内に完了させ、2回に分けて総額2億8,300万ドルを支払った。また、内部送金やアーン商品の償還遅延による損失についても補償を行う方針を示している。
また同社は、一部現物取引ペアでの極端な価格下落についても調査を実施した。
その結果、IOTXやATOMでは古い指値注文の約定や価格表示の小数点設定変更による一時的な表示不具合が原因であることが分かった。現在はすでにUI修正が行われているという。
バイナンスは「透明性は当社の中核的価値の一つ」と述べ、補償進捗の随時報告とともにリスク管理やシステム安定性の強化に注力すると強調した。また、今後の調査で不正取引が確認された場合には規制当局への報告も行うとしている。
※ディペッグ:安定コインや担保資産の価格が想定された値から乖離すること。価格安定が失われる状態を指す。
補償対応の波及効果 信頼回復と市場リスクの両立課題
今回の補償により、バイナンスはユーザー信頼の維持に一定の成果を挙げたと言える。
迅速な対応は、システム不具合や市場急変動が発生した際のリスク管理の模範となり、海外市場における企業評価の向上につながる可能性がある。
この対応は他の暗号資産取引所にも影響を与え、業界全体でユーザー保護やシステム安定性への意識が高まる契機となるかもしれない。
一方で、巨額の補償支出は財務的負担を伴うため、同様の事象が再度発生した場合の影響は軽視できない。特に流動性不足や古い注文の約定による価格急落は、システム改善だけでは根本解決が難しいリスク要因となる。
今後は、透明性を維持しつつ、取引プラットフォームやアーン商品の監視体制を強化することが不可欠だろう。技術的不具合や市場急変動に対して、補償とリスク管理のバランスを取ることが、長期的なブランド価値の維持につながると考えられる。











