ウォルマート、OpenAIと提携 ChatGPTで対話型コマースによる買い物完結へ

2025年10月14日、米ウォルマートは生成AI「ChatGPT」を提供するOpenAIとの提携を発表した。ウォルマートの顧客や傘下の会員制スーパー「サムズクラブ」の利用者がChatGPT上で商品を検索・購入できる仕組みを構築する。
ウォルマート、チャットGPTを新たな販売経路に採用
世界最大の小売企業ウォルマートが、生成AIの開発を手がけるOpenAIと提携し、ChatGPTを通じて商品購入が完結する仕組みを導入する。利用者はChatGPTに話しかけるだけで、商品の検索、比較、注文までを一気に行えるようになる。
これにより、AIが購買プロセス全体に関与する「対話型コマース(※)」が現実のものとなる。
ウォルマートは以前からAI技術の導入を進めており、自社アプリでは買い物支援AI「スパーキー(Sparky)」を展開中だ。スパーキーはレビュー要約やおすすめ商品の提示などを自動で行い、ユーザーの購買行動を効率化している。
今回の提携によって、ウォルマートは自社アプリ内だけでなく、外部プラットフォーム上でもAIを活用した新しい顧客接点を拡大することになる。
競合であるアマゾン・ドット・コムはすでに生成AI搭載の買い物支援ツール「ルーファス(Rufus)」を投入しており、自然言語による検索・提案を強化している。
ウォルマートとしては、OpenAIとの提携を通じてアマゾンとの差を縮め、AI主導のEC市場における存在感を高める狙いがあるとみられる。
ウェブ解析会社シミラーウェブによれば、9月におけるウォルマートのウェブサイトの外部流入のうち、ChatGPT経由は約15%に達し、8月の9.5%から大幅に上昇した。
AIを介した購買行動がすでに顕在化しており、対話型AIがEC流通の主要経路になりつつあることを示している。
※対話型コマース:チャットボットやAIアシスタントを介して、自然な会話の流れの中で商品を検索・購入できる仕組み。ユーザー体験の向上と購買効率の改善を目的とする。
AI主導の購買体験が拡大 利便性向上の裏に生まれる新競争
ChatGPT経由での買い物は、消費者にとって利便性の高い選択肢となる。検索や比較の手間を省き、自然な会話から最適な商品を導く仕組みは、購買のスピードと満足度を大幅に高める。AIが嗜好や履歴を学習することで、パーソナライズされた提案も進化すると期待できる。
一方で、小売企業にとっては新たな競争構造が生まれる可能性がある。AIを通じた購買では、ユーザーが特定のブランドや店舗を意識せず、AIが提示した選択肢を受け入れる傾向が強まる。つまり、「どの店で買うか」ではなく「どのAIに勧められるか」が購買の決定要因となりうるのだ。
ウォルマートはこの新潮流の中で、OpenAIとの連携を武器に主導的な地位を狙うが、AIとの連携精度やデータ分析力が今後の成否を左右するだろう。
生成AIが購買のゲートウェイとなる時代に、小売業の競争軸は価格や品揃えから「AI最適化能力」へと移行していく可能性が高い。