読字困難を抱える人を支援するアプリ「MYdys」日本版が正式リリース

2025年10月8日、フランス発のスタートアップFACIL’iti SASの日本法人であるファシリティジャポン株式会社は、読字困難(ディスレクシア)や文字認識に課題を抱える人々を支援するアプリ「MYdys(マイディス)」の日本版を正式にリリースした。
「読む」体験を支援する日本初の読字困難サポートアプリ
「MYdys」は、文字認識が難しい人々のために開発された「読むこと」を支援するアプリだ。すでにフランスやアメリカで10万件以上ダウンロードされ、CES Innovation Award 2023も受賞している。
今回、日本法人によるローカライズ版が登場した。
日本版では、音声読み上げだけでなく、文字のフォント・行間・配色を自由にカスタマイズできる点が特徴だ。
ユーザーが「読みやすい形」に調整できることで、“読む”行為そのものを支援する仕組みを実現した。
さらに「じぶんフォントプロジェクト(※)」と連携し、ディスレクシアを含む多様なユーザーに対応したフォントを実装している。
ファシリティジャポンは、川崎市産業振興財団が主催する「かわさき起業家オーディション 第140回」で主催者賞と6つの関係団体賞を受賞した実績がある。
川崎市の開発支援拠点「ウェルテック」でサポートを受け、市内小中学校で実証実験を進めている。来年度には市の「かわさき基準」認証取得も目指している。
アプリはフリーミアムモデルを採用し、無料利用(50クレジットまで)に加え、有料プラン(月額660円・1,100円)を提供する。
教育機関や法人向けにはライセンス契約も可能で、組織単位での導入も見込まれる。
※じぶんフォントプロジェクト:ディスレクシアなど文字の読み書きに困難を持つ人のために開発された、読みやすさを重視した書体開発プロジェクト。
教育・行政への波及に期待 インクルーシブ社会実現への一歩
「MYdys」の登場は、学習支援と情報アクセスの在り方を再定義する動きといえる。
日本では読字困難者への支援がまだ十分に整っておらず、教育現場での教材や読み書き支援ツールの不足が課題となってきた。
アプリが普及すれば、授業や試験における公平な学習環境の実現に寄与する可能性がある。
一方で、実際の導入にはデバイス整備や教師・職員のリテラシー向上も不可欠であると考えられるため、行政や教育委員会との連携が求められるだろう。
ファシリティジャポンは今後、出版・行政・企業との協業を進め、誰もが平等に学び・働けるデジタル環境の整備を目指す方針を掲げている。
グローバルで評価を受けた同アプリの日本展開は、誰もが取り残されずに学び・働ける社会づくりに向けた象徴的な一歩となるだろう。