メルカリ、出品禁止を強化 安心・安全確保の新方針を公表

2025年10月9日、メルカリはマーケットプレイスの安全性向上を目的に、出品禁止措置を含む新たな対応方針をホワイトペーパーで公表した。外部有識者との議論を経て、安心・安全の確保を最優先とする国内向け施策である。
メルカリ、安心・安全損なう商品への出品禁止を明確化
メルカリは、2025年7月と9月に開催した「第5回マーケットプレイスのあり方に関するアドバイザリーボード」の議論を踏まえ、出品禁止を含む新方針を策定した。
これは従来の「マーケットプレイスの基本原則」を維持しつつ、原則の枠外で個別の事案に対応できる柔軟な措置である。
過去には、コロナ禍でのマスクや消毒液、備蓄米、空薬きょうなどが出品禁止の対象となり、安全性確保の観点から措置が実施されてきた。
今回の方針も同様に、需給の逼迫や不正出品、誹謗中傷など、マーケットプレイスの秩序や安心感を損なう可能性が高い商品に適用される。
ホワイトペーパーでは、基本原則に基づきつつも経営判断で柔軟に対応できる仕組みの詳細が示されており、透明性の確保とユーザー理解の促進を意図している。
外部有識者による定期レビューを組み合わせ、社会情勢の変化やステークホルダーの意見も反映される体制を構築した。
メルカリはまた、アドバイザリーボードを通じて原則の定期的な見直しを行い、社会の要請に沿ったマーケットプレイス運営を継続するとしている。利用者が安心して取引できる環境を確保することを、企業としての最優先課題と明確に打ち出した。
健全化と自由度の両立 AI時代の取引環境に求められる新基準
今回の方針強化は、メルカリが掲げる「自由で多様なマーケットプレイス」を維持するための一手と考えられる。
急速なAI生成コンテンツの普及や価格高騰を狙った不正出品など、デジタル取引の複雑化が進む中で、企業自らが透明な基準を示すことは信頼維持の鍵となる。
出品禁止の強化は短期的には出品者の自由を制限する側面があるが、長期的には取引トラブルの抑制につながり、プラットフォーム全体の健全性を高める効果が見込まれる。
特に、利用者の安心感の醸成はサービス継続率やブランド価値の向上にも直結するだろう。
一方で、禁止範囲が拡大しすぎれば、利用者が感じる「自由な取引空間」との乖離が生じる懸念もある。社会の変化に応じた柔軟な運用と、ユーザーとの対話のバランスを取ることが、メルカリの次の課題となる。
今後は他のEC事業者やリユース市場にも同様の潮流が波及する可能性がある。AI時代における信頼構築の新たな基準を示す試みとして、今回の取り組みは注目を集めることになりそうだ。
メルカリ プレスリリース:https://about.mercari.com/press/news/articles/20251009_principles/