グッドパッチ、採用AIエージェント「HRmony AI」提供 PX思想の人事改革へ

2025年10月8日、グッドパッチ(東京都渋谷区)は、採用人事業務を効率化するAIエージェント「HRmony(ハーモニー)AI」の正式サービスを開始した。
候補者や従業員の体験価値を起点とするPX(People Experience)思想に基づき、求人票作成から面接評価までの主要プロセスを自動化する。
AIが採用業務を包括支援 人事負担を軽減し体験価値を可視化
企業変革を支援するデザイン会社グッドパッチが提供を始めた「HRmony AI」は、採用のあらゆる段階をAIで支援するエージェントである。
労働人口の減少によって採用競争が激化する中、採用担当者が膨大な事務作業に追われ、候補者との対話や体験設計に十分な時間を割けないという課題を背景に開発された。
本サービスには、採用要件作成、スカウト支援、書類選考支援、面接サポート、面接評価支援の五つの主要機能を備える。
たとえば採用要件作成では、職種や求める人物像を入力するだけで、求人票や採用ペルソナ(理想的な人物モデル)、採用基準を自動生成する。
同社はPX(People Experience※)の理念を中核に据え、候補者にとっての「体験の質」を最適化する仕組みを志向する。AIによる効率化とデザイン思考の融合により、採用活動全体の戦略的再設計を目指す構えだ。
※PX(People Experience):採用候補者や従業員の体験を基点に、組織設計や業務プロセスを最適化する考え方。従来のCX(顧客体験)の社内版とされる。
採用力と公平性を高めるAI 人間の判断をどう補完するかが焦点か
HRmony AIの導入は、採用現場に複合的な変化をもたらすとみられる。
最大のメリットは、求人票作成や書類選考などの反復的作業をAIが担うことで、人事担当者が対話やカルチャーフィットの確認といった創造的業務に集中できる点だろう。
評価プロセスの標準化が進めば、主観的な判断を排し、採用の公平性を高める効果も期待できる。
一方で、AIの判断基準が過去データに依存するため、学習段階でのバイアスが採用結果に影響するリスクもある。AIを“採用判断の補助者”として設計し、最終判断を人間が担う仕組みの構築が不可欠になるだろう。
今後は、HRmony AIの機能を既存の人事システムやチャットツールと連携させ、採用データを横断的に分析する展開が見込まれる。
採用活動が「勘と経験」から「データと体験設計」へ移行する中で、グッドパッチのPX起点のアプローチは、国内人事領域における新たなスタンダードを形成する可能性がある。