経産省、AIロボ戦略を骨子化 多用途化で人手不足に挑む

2025年10月8日、経済産業省はAI(人工知能)を搭載したロボットの開発や活用を推進する国家戦略の骨子を公表した。人口減少に伴う人手不足への対応を目的に、ヒューマノイド型を中心とした多用途ロボットの開発支援を打ち出した。
AIロボの国家戦略を策定へ 多用途型の開発支援を本格化
経済産業省が示した骨子は、AIが制御する「AIロボティクス」を国家戦略の柱に据える内容だ。製造や物流、介護、災害対応など、多様な現場で活用できる多用途ロボットの開発を重点的に支援する。特に、ヒューマノイド(人間型)ロボットの研究を中核に据えた。
同省は今年8月に有識者による検討会を設置し、AIロボティクス(※)の将来像を議論。骨子では、早期に導入できる分野や業界を特定し、スタートアップ企業を中心に人材育成や開発費の支援も強化する。自動運転車やドローンなど関連分野の技術開発も包括的に後押しする方針だ。
武藤容治経産相は「ロボット産業の競争力を高め、人手不足の克服に取り組みたい」と述べた。経産省は骨子をもとに議論を進め、2025年度中に戦略を策定する予定である。
※AIロボティクス:人工知能(AI)がロボットの動作や判断を自律的に制御する技術領域。ヒューマノイドやドローン、自動運転車などに応用される。
AIロボが拓く生産構造の転換 中小支援と安全制度が焦点に
AIロボティクスの推進は、慢性的な人手不足が続く日本経済において、生産性向上や労働構造の見直しにつながる可能性がある。
特に中小企業では、作業自動化による業務効率化や24時間稼働体制の実現など、経営基盤を強化する効果が期待される場合もある。
高齢化が進む介護や建設業など、人材確保が難しい分野にとっても一定の支援となりうる。
一方で、課題も少なくない。
AIによる判断の透明性や安全基準の整備、万一の事故時の責任所在といった制度面の議論が必要となる。
導入コストが高額であることから、大企業と中小企業の間で技術格差が拡大する懸念も残る。加えて、AIが人間の職域に影響を及ぼす可能性についても、社会的に議論が求められるだろう。
専門家の間では「AIロボは日本の産業構造転換を支える有望な技術」との見方がある。
今後は政府がどの程度、持続的な資金支援や制度整備を行えるかが注目される。
AIロボティクスが社会インフラとして広く活用されるためには、技術革新とともに倫理・安全・雇用の三位一体での議論が重要となるだろう。
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