NTTドコモ、全国2048店舗にAIロープレ導入 生成AIで応対品質向上へ

2025年10月6日、株式会社NTTドコモは、AIがロールプレイング研修の実施からフィードバックまでを担う「AIロールプレイングシステム(AIロープレ)」を全国のドコモショップ2,048店舗に導入した。
生成AIと音声解析技術を活用し、スタッフ育成の効率化と応対品質の向上を同時に実現する狙いだ。
ドコモ、AIロープレを全国導入 生成AIで人材育成と顧客満足度を強化
NTTドコモは、ロールプレイングの実施から採点、フィードバックまでをAIが担う「AIロールプレイングシステム(AIロープレ)」を全国のドコモショップに展開した。
NTT人間情報研究所が開発した次世代メディア処理AI「MediaGnosis(メディアグノーシス)(※)」と音声合成技術を搭載し、表情や声のトーンを解析して応対スキルを定量的に評価できる。
受講者はAIアバターを相手に実践形式の研修を行い、終了後にはAIが自動採点とフィードバックを提供する。
録画・文字起こし機能を備え、個人練習後の振り返りや育成担当者との共有も容易に行える仕組みだ。
さらに、ヒント機能を通じて新人スタッフの早期スキル習得を支援する仕組みも導入されている。
従来、ドコモショップのロールプレイング研修は人手による準備とフィードバックに多大な工数を要していた。
NTTドコモはAIロープレにより、育成担当者が研修に費やす時間を月平均5時間削減し、年間で約60時間の稼働削減が可能だと見込んでいる。
2025年2月から一部店舗で実施されたトライアルでは、教育効率の向上とスタッフの実践力強化が確認され、全国導入に至った。
ドコモは今後、AI活用を一層推進し、応対支援を強化、応対品質を向上する方針だ
※MediaGnosis(メディアグノーシス):NTTが開発したメディア処理AI。音声・映像・感情などの多モーダル情報を解析し、これまでよりも効率的な「学習」と高精度かつ総合的な「推論」を実現する次世代メディア処理AI。
AIがもたらす教育改革 “定量評価”が人材育成を変える
AIロープレの導入は、店舗運営の効率化にとどまらず、教育の質をデータで可視化する取り組みとして注目されている。
従来の接客評価は属人的であったが、AIによる声・表情の解析によって、客観的なスキル評価が可能になった。これにより、教育の均一化と精度向上が期待される。
ただ、AI評価が過剰に定量化されることで、スタッフが「評価のための会話」を意識しすぎ、実際の接客の柔軟さを損なう懸念はある。
さらに、AIのアルゴリズムが特定の話し方や表情を「高評価」と学習してしまえば、接客の画一化を招くおそれがある。
それでもトライアルが示す通りAIロープレの効率性は高く、今後は通信業界のみならず、小売、金融、公共サービスなど、対人応対を伴う業種への展開も見込まれる。
AIによる定量評価と自然対話の融合は、“人が人を育てる”現場の形を大きく変える可能性がある。