AIベンチャー市場に過熱警報 GICが「ハイプバブル」示唆

2025年10月3日、AI新興企業へのベンチャーキャピタル(VC)投資が過熱している。シンガポール政府系ファンドGICのブライアン・ヨー氏は、「アーリー期」で評価額が過大化していると警鐘を鳴らした。
AIベンチャーへの投資が過去最高に GICが「ハイプバブル」警告
AI分野のスタートアップが、世界的に記録的な資金を集めている。調査会社ピッチブックの報告によれば、2025年第1四半期のAI関連企業の資金調達額は世界で731億ドルに達し、VC全体の57.9%を占めた。
しかし、過熱感を懸念する声も強まっている。GICのグループ最高投資責任者(CIO)ブライアン・ヨー氏は3日、「アーリー期でややハイプバブルが起きている」と発言した。ヨー氏は「市場の期待はテクノロジーの実現力よりも先走っている可能性がある」と述べ、AI関連の設備投資の急増が経済の潜在的な弱さの一部を覆い隠している可能性にも言及した。
また、投資ファンドTPGのトッド・シシツキー社長は、投資家にとって「FOMO(※)」は危険だと指摘。「数カ月で売上高1億ドルを超える企業がある一方で、従業員1人あたり4億〜12億ドルの評価額を付けられるケースもある」と述べた。
※FOMO:Fear of Missing Outの略。投資機会を逃すことへの恐怖から、過剰な投資判断に陥る心理現象。
成長期待と過熱の狭間 AI投資の持続性が問われる
AI市場への巨額投資は、技術革新を後押しする大きな要因とみられる。
計算資源やソフトウェア開発への資金流入によって、生成AIや自律型エージェントなどの商用化が加速しているとの見方もある。
これにより、企業の業務効率化や製品開発スピードの向上が進み、グローバルな競争力に影響を与えている可能性がある。
一方で、資金の集中がもたらす副作用も懸念される。
過大評価された企業が実績を伴わず急成長を続けた場合、将来的に資金繰りの悪化や評価額の調整が生じるリスクも指摘されている。
過去のブーム同様、「勝者総取り」の構造が進めば、淘汰の動きが早まる可能性もある。
長期的には、AI技術の社会実装や持続的なビジネスモデルの確立が真の価値を左右する分岐点となるだろう。ヨー氏が述べたように、投資家が「話題性」ではなく「実用性と収益性」に基づいた選別を進められるかが、バブル化を防ぐカギになると考えられる。
AI業界は今、期待と現実のバランスを模索する過程にあるといえるだろう。
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