任天堂、「政府への働きかけは事実無根」と声明 生成AI巡る誤情報で国会議員が投稿訂正

2025年10月5日、任天堂は公式X(旧ツイッター)を通じ、「生成AIに関連して日本政府に対して何らかの働きかけをしているような事実はありません」との声明を発表した。
国民民主党の浅野哲衆院議員が同社のロビー活動を示唆する投稿を行い、SNS上で拡散していたが、浅野氏は同日、誤情報であったと訂正した。
任天堂が誤情報を否定、生成AI巡る政府ロビー活動報道を打ち消す
任天堂は5日、企業広報・IRアカウントで「生成AIに関連して日本政府に対して何らかの働きかけをしているような事実はありません」と明言した。発表は日本語と英語の両言語で投稿され、国内外で広く拡散された。
発端は、国民民主党の浅野哲衆院議員が3日にXで投稿した内容である。
浅野氏は「任天堂はIP(知的財産)保護のため生成AIの使用を避け、政府へのロビー活動も進めています」と述べた。
この投稿が複数のニュースアカウントに引用され、SNS上で共有される事態となっていた。
任天堂のコメントを受け、浅野氏は5日夜に訂正文を投稿。「結論として、ロビイングの事実はなく、私の投稿内容に誤情報が含まれていた事が分かりましたので訂正させていただきます。特に関係者の方々にはお詫び申し上げます。」と謝罪した。
同社は「生成AIの活用の有無にかかわらず、当社のIPを侵害していると判断したものについては、適切な対応をとる方針」と説明している。
生成AIを巡っては、米オープンAIの動画生成モデル「Sora2(※)」などが、既存キャラクターや世界観を模倣したコンテンツを容易に生成できることから、著作権保護の在り方が国際的な議論の的となっている。
※Sora2:米OpenAIが開発した動画生成AIモデル。テキストから数秒〜数分の映像を自動生成できる技術で、著作物に似た映像を作成できる点が議論を呼んでいる。
拡散の速さが浮き彫りに AI情報の発信に問われる責任
今回の件は、生成AIという新技術に対する社会的関心の高さと、情報伝達の速度がもたらすリスクを象徴している。
裏付けのない発言が短時間で数万人に届く環境では、誤情報の修正よりも拡散の方が圧倒的に速い。誤りを認めて訂正しても、一次投稿の印象は残り続ける。特に生成AIや著作権といった専門性の高いテーマでは、断片的な理解が誤解を助長する可能性もある。
誤情報の拡散が、企業のブランドイメージや投資家心理に影響を与えるリスクは無視できないだろう。
一方で、任天堂の迅速な声明発表は、企業広報としての透明性と危機対応力を示す好例といえる。
英語版を同時に投稿した点は、海外ファンコミュニティや投資家への誤解を最小限に抑える狙いがあったとみられる。生成AIと知的財産権の線引きが曖昧な中、誤情報が国際的に広がる前に公式対応を行うことが、企業防衛の新たな標準になると考えられる。
今後、AIとエンタメ産業の接点はさらに拡大すると予想できる。
任天堂をはじめとする大手企業がどのようにAI時代の著作権管理を進化させるかが、業界全体の信頼性と競争力を左右することになるだろう。
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